2019年6月26日 6:12 PM

『第90回理学療法通信』 

『誤嚥性肺炎について(3)』

 高齢であったり脳梗塞など様々な原因により、噛んだり飲んだりする機能が低下すると、食べ物を口から食道へスムーズに送り込むことが難しくなります。今回は、食べ物を目で確認してから、食べ物を飲み込み「ごっくん」するまでに起こりうる問題について対処方法も含め、いくつかご紹介したいと思います。

【食べ物を見て確認する時期】

①認知症であったり、食欲を自らコントロールできない方の場合、食べ物を食欲に任せて手掴みで口に運び、口の中いっ ぱいに詰め込んでしまうことが

  よくあります。食欲が旺盛でご自身で食べ方を調整できない方の場合、むせ

   込みや誤嚥に繋がってしまう恐れがあります。

★対処法

・はじめからご飯やお味噌汁、おかずをテーブルの上に並べず、小さい器で

 少量ずつ提供し、かきこみを防止します。

・スプーンの大きさを小さめのスプーンに変更し、一度に多くの食べ物を

 取り込まないよう工夫します。また、箸が使える方は箸を使って頂くなどの工夫も大切です。

・口に入れた食べ物をしっかり飲み込めたかを確認することも誤嚥防止につながります。食べ物を

 しっかり飲み込めていると思っていても、まだ口の中に溜め込んでしまっている場合もあるため、

 介助する場合は、時々、大きく口を開けてもらい、口の中に食べ物がないか確認することも重要

 です。

②食欲とは別に食べ物が食べ物であることを認識できていない場合や、食べ物を口に運べない場合も

 あります。この場合、食べ物を食べ物と認識できているかを確認することも重要です。

★対処法

・まずは、大好物や好みのものを探り、食べられるものから提供してみましょう。

・食べ物をテーブルの上に提供しただけでは食べない場合があります。その場合には、ただ「食べて

ください」「おいしいので食べましょう」ではなく、その食べ物についてのエピソードなどを盛り込んだ話をしたり、話を盛り上げることで、意欲的になり食事(食欲)につながる場合があります。また、少しだけ食べ物を口に運んであげることで、目の前にあるものが食べ物であると認識する場合もあります。一度、目の前の物が食べ物と理解できればご自身で食べ続ける場合もありますので、目の

 前にあるものが食べ物であるということを理解して頂くことはとても重要です。

・食べ物の見た目や温度を工夫することや、匂いを嗅ぐのも有効とされています。

【食べものを噛む時期】

・口の筋肉や頬・舌などが上手く動かせないと、食べ物をこぼしたり、口の中に溜め込んでしまうこ

とがあります。また、唾液を適度に出すことができないと、口の中で上手に食塊(食べ物の塊)が作れず、口の中で食べ物がバラバラになってしまいます。バラけた食べ物を上手にノドの奥に送ること

 ができないと、食べ物の一部がノドに詰まり、むせ込みや誤嚥につながる場合があります。

対処する前に・・・

・まずは、普段の会話を観察し、口の動き・頬の動き・舌の動かし方・唾液の出かたを観察してみま

しょう。会話したときに、口の開き方が小さい方は食事の時も上手に口を開けられない場合が多い

です。また、言葉が不明瞭で呂律が回っていないような話し方をする方は、舌が上手に使えていません。会話のときに表情が乏しく普段笑わない方は、頬の筋肉を使う機会が少ないので、頬が硬くなり

 唾液が出にくい場合がほとんどです。

対処法

・普段から、会話を沢山するように心がけましょう。話題が浮かばないときは、本や新聞などを大き

  な声を出して読むことをお勧めします。もし、口が上手に開けられないのであれば、頬を蒸しタオル

  などで温めたり、お風呂上りにマッサージしてから本を読むと良いでしょう。

【食べ物を飲み込む時期】 

・食べ物をノドの奥で「ごっくん」と飲み込むためには、舌の奥の部分を口の天井にある粘膜の上に

 ぴったりと貼り付けることができないと「ごっくん」できません。

対処法

・普段から唾液を飲む練習をしましょう。唾液を飲む段階でむせる場合は、食べ物を食べた時もむせ

ます。「ごっくん」するタイミングが上手に取れないと、むせ込みなどの危険性が高くなります。

 

次回は、誤嚥やむせ込みを予防するために、当施設で実施している運動についてご紹介したいと思います。

 

 

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