2025年1月8日 8:53 AM

『第113回理学療法通信』

今回は尿漏れ・尿失禁についてご紹介したいと思います。

■はじめに

「尿が漏れやすくなった」「トイレに間に合わなくなった」「トイレに行く頻度が多くなった」など症状はさまざまですが、尿が漏れてしまうことは年齢に関係なくあるそうです。しかし、プライベートな問題なので、相談できずにいる方も多いようです。そこで、今回は、尿漏れの種類と対策について、簡単にご紹介させて頂きます。

■ご自身がどのパターンに当てはまるかチェックしてみましょう

尿失禁(尿漏れ)にはそれぞれ種類がありますが、重複しているものもあるので、チェック項目が多いものを参考にされるといいでしょう。

・腹圧性尿失禁 

□ 咳やくしゃみ、笑うときなど出てしまう □ 妊娠・出産後 □ 帝王切開での出産後

□ 前立腺癌の術後

・切迫性尿失禁 

□ 最近、トイレに行く頻度が増えた  □ トイレまで間に合わずに漏れてしまう

□ 急に尿意を催す

・溢流性尿失禁

□ 前立腺肥大症と診断されている □ 直腸がんや子宮がんの手術後 □ 尿意を感じない

□ 排尿時は、おなかに力を入れて排尿している □ 尿がダラダラ出てしまう

□ 尿が勢いよくでない

・機能性尿失禁

□ トイレ以外で排泄してしまう □ トイレに行く前に漏れてしまう

□ 一人でトイレに行けない □ 尿が漏れていることに気づかない

■尿失禁の改善方法

★ 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁  (図1:骨盤底筋群)

このタイプの失禁は「骨盤底筋群」を鍛えることで、改善される場合があります。

骨盤底筋群(図1)とは、尾骨と恥骨と坐骨をつなぎ、子宮や腸、膀胱(ぼうこう)などの内臓を体の下からハンモックのように支えている筋肉です。また、腹圧を高め姿勢の軸を安定させるときに活躍する筋肉です。この骨盤底筋群という筋肉は一つの大きな筋肉ではなく、いくつかの筋肉から構成されております。一定の筋力が保たれていれば、尿漏れになることはありませんが、肥満、妊娠で骨盤が広がったり、出産などで筋肉に過度なストレスが掛かった場合、加齢によって筋力が衰えてしまった時などに症状として現れます。次に、トレーニング方法をご紹介します。

<骨盤底筋のトレーニング>

①仰向けに寝た状態で両膝を立てて寝ます。

②鼻から息を吸って

③1~8秒かけて口からゆっくり息を吐いていきます。息を吐きながら女性は膣と肛門を閉め、男性は肛門を閉め、筋肉を頭側(上)に引き上げるイメージで筋肉を硬くしていきます。

④ゆっくり息を吐いていき、最後の2秒でギュ!っとさらに意識的に下腹部の筋肉を硬くしてみましょう。そうすることで、おなかの一番内側についている腹横筋という筋肉が働き、より一層骨盤底筋群を鍛えることに繋がっていきます。

<生活を見直しましょう>

トイレ日誌を書くなどご自身の排尿パターンを把握しましょう。トイレで上手に排泄した時と、失敗してしまった時を細かに記録し、排尿のパターン(時間・場所・状況・1回の尿量がどの程度なのか)を自身で知ることで、対策が明確になってきます。

溢流( い りゅう)性尿失禁

このタイプは、男性に多く前立腺肥大などが原因となり、尿が出にくくなるなどの排尿障害が前提となるものです。この場合の症状の一つとして、残尿感はある けど自分で排尿できない状態なので、尿が少しずつ出てしまいます。トイレで排尿したばかりなのに、ズボンが濡れてしまったなど、意思とは関係なく出てしまう場合には、医療機関に受診し対応を検討されるといいでしょう

★機能性尿失禁 

このタイプは、排尿機能は問題ない状態なのに、筋力低下により立ったり座ったりする動作が遅い,ズボンを下すのに時間がかかるなど運動機能の低下により、トイレに辿り着くまでに漏れてしまうものや、トイレにいるけど、自身の身体が上手く機能せずに排尿してしまうなどがあげられます。その他に認知機能低下が原因で排尿動作ができずに失禁してしまうなども含まれます。

 

・運動機能低下によるものであれば、トイレまでの導線を短縮したり、筋力をつけ

たり動作などの運動能力を高めることで改善できるものもあります。

 

・認知機能低下の場合は、介護者の協力が不可欠になります。このタイプの失禁も排尿のパターンを把握する必要があるため、日記は有効となります。尿意や失禁状態(リズム)を把握し、排尿のおおよそのタイミングが把握できれば、事前にトイレ誘導を行うこともできますし、状況に合わせて環境を整えることで、改善が見込める可能性があります。

 

 

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