高次脳機能障害とは
交通事故や脳の病気など、脳に損傷が生じた際に知的な認知機能を司る部分が障害された状態を『高次脳機能障害』といいます。また、日常生活や社会生活を送る上で、見た目は普通に見えても、誰でもできると思われてしまうようなことが出来ないことがあるため、病気の理解と周りの協力が必要となる場合が多いです。
高次脳機能障害の種類と症状
「注意・記憶・遂行機能・社会的行動」などの障害があり、日常生活動作または社会生活に制約が生じます。
★注意障害
●例えばこんな症状・・・物事に集中できない、周りに注意を向けることが出来ない
□ ぼんやりしていて、自分の周りの人や事柄に気づけない
□ 気が散りやすい
□ 簡単なミスが多い
□ 二つのことが同時にできない
□ 一つのことに集中しすぎて他のことに関心を転換できない
★記憶障害
●例えばこんな症状・・・思い出せない、新しい事柄や人を覚えることができない
□ 日時、場所、人の名前が覚えられない(見当識)
★遂行機能障害
●例えばこんな症状・・・
物事の段取りを組み立てられない、事態の変化に臨機応変に対応できない
□ こうすると、こうなるという物事の見通しができない
□ 計画性がなく、効率を考えて実行できない
□ イレギュラーに対応できない
□ 締め切りが守れない
★社会的行動障害
●例えばこんな症状・・・
よくないとわかっていながらも怒りを抑えることができない
□ 依存的になる
□ 自分から何かを始めることができない
□ 感情のコントロールがうまくいかない
□ 状況に適した行動がとれない
□ 急に幼くなる
その他、高次脳機能障害にはいろいろな症状があります。
★失語症
●例えばこんな症状・・・会話に問題が生じる
□ 言葉を上手に発することができないが、行動などは合っている
□ 言葉を理解はしているけど言葉を上手に話せない
★ 失認症(視覚失認、相貌失認、聴覚失認)
●例えばこんな症状・・・
聴力、視力、感覚、記憶などに問題がないのに、物や絵、図形を見てもその物が
何であるかわかっても、その名前が言えず、どのように使うのかがわからない
□ 身近な人や物の名前がわからない
□ 見ているものが何かわかるが、それをどのように使うかがわからない
□ 鼻や口があるのはわかるけど、顔として認識できない
□ 話や環境音が聞き取れない
★半側身体失認
□ 左側の麻痺があっても、麻痺していることがわからない
□ 歩けないのに歩けると言い張る
□ 左側の手足が自分のものではなく他人のものと捉えることもある
★半側空間無視
●例えばこんな症状・・・体の半分をないものとして生活してしまう
□ 食事の時に左側にあるものを残す
□ 常に、右側を向いていたり、顎が右へ傾いている
□ 歩行時に左側にあるものに衝突しやすい
★失行症
●例えばこんな症状・・・頭でわかっているけど動けない
□ 簡単な動作指示が実行できない
□ 物をどのように使用していいのかわからない(衣服の着脱ができない)
□ 人の模倣ができない
★地誌的障害
●例えばこんな症状・・・自分の置かれている位置状況がわからない
□ よく知っている道で迷う
□ 家の近くの写真をみせてもわからない
高次脳機能障害と認知症の違い
高次脳機能障害は、脳損傷の後遺症による認知障害ですが、進行性でないことや発症時期が明確である違いがあります。また、「高次脳機能障害」の場合は、治療やリハビリなどの訓練によりある程度改善できる可能性があることと言われています。
お家でできる高次脳障害の対応
主に注意障害や記憶障害についての対応ですが、参考にしてみてください
★ピースの少ないパズル
★かなひろい→新聞や雑誌、絵本の一部を切り取り、「あ・ま・い」など課題となる文字を拾う練習
★環境設定
転倒が多く見られる場合、できない課題に対して、家族で話合い、一緒にできる簡単なものから反復して注意を促し実践していく
★メモや日記をつける
★簡単な文字(果物)の名前をできるだけ多く書き出す。
(野菜)の名前をできるだけ多く書き出す。(花)の名前をできるだけ多く書き出す
★(野菜・楽器・県)のなどの名前をランダムに書き出し、野菜だけを消していく
(抹消する課題を変えながら実践する)
★2桁~3桁の数字や物の名前を箇条書きにしてそれを課題として紙の端など少し離れた場所に書き写す
最後に・・・『Well‐being』という考え方
高次脳機能障害は、病気の後遺症と向き合っていても「できること」と「できないこと」が徐々に明確になってきます。身体的・精神的に問題なく過ごすことは理想ですが、「どうやったら病気が治せるか」よりも「どうすれば幸せになれるか」ということに考え方にシフトしていくことで生活しやすくなるとされています。
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