『 認知症について(4)』
軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)と認知症予防
軽度認知障害(以下:MCI)は、大脳皮質の萎縮(脳の容量減少)や神経細胞の減少などにより、
医者から「認知症」と診断されるより前の状態を指します。年相応の認知機能低下よりも認知機能が低下しているなど、高齢者の10%~20%がそれに該当すると言われています。このMCIの場合、何もしなければ認知機能の低下がそのまま進行してしまいますが、この段階で予防することができれば、回復する可能性が高いと言われています。
一方、医師から「認知症」と診断されてから認知症予防の食生活や運動を行っても、現時点では、
改善しにくいため、MCIの時期あるいは、MCIになる前から予防することが大切とされています。
認知症予防と運動効果について
認知症の方の運動効果については、実際のところ研究段階です。特に、MCIの方を対象とした運動
効果についての研究は現在進行形の状態であり、多くの医療機関や介護施設で取り組みがなされています。ある施設では、複合的な運動プログラム(準備体操としてのストレッチ・有酸素運動・筋力強化練習・二重課題運動など)を通じてMCIの高齢者の認知機能の低下抑制や記憶力向上の効果が認められたという研究結果も報告されています。しかし、複合的な運動のため、どの運動が認知症予防に最適なのかということは、まだわかっていません。しかし、積極的に運動した場合と運動をしなかった場合では、たった半年で脳容量(脳萎縮)に大きな差みられたそうです。
認知症に有効とされる運動
2011年の研究では、有酸素運動とストレッチで比較し、有酸素運動で記憶を司る「海馬」の体
積が2%増加したという結果が出ています。そして、ストレッチだけでは逆に「海馬」の体積が減少したとのことです。つまり、有酸素運動を行うことで、適度に心拍数を上昇させ、全身の血流はもちろんの事、「海馬」や「前頭前皮質」など記憶や認知機能を司る脳血流などが改善されたことにより、認知症予防には無酸素運動より有酸素運動が有効だということがわかっています。その他、有酸素運動だけではなく、有酸素運動と同時に認知機能への刺激活動を同時に行うことも、認知症予防に最適であることも多く知られています。
★ 認知症に良いと言われる有酸素運動
(例)ウォーキング/エアロビクス/水泳 など (1日30分/週3回程度)
★ 有酸素運動と認知機能への刺激を同時に行う活動
(例)コグニサイズ/料理/そろばん/デュアルタスク運動(二重課題運動)
【コグニサイズとは】
国立長寿医療センターが開発し、推進している運動で、認知症予防を目的とした有酸素運動と
脳活性を促す認知課題を組み合わせた運動
【デュアルタスク運動とは】
有酸素運動と認知課題を同時に促すもの
(例)・ウォーキングしながらしりとりを行う ・足踏みしながら野菜の名前を沢山言ってみる
●運動は、楽しみながら行うのがいいそうです。普通の散歩でも、お友達と話をしながら行って、 できるだけ長く続けられるように心掛けましょう。
《参考URL》
・牧迫飛雄馬・島田裕之・土井剛彦・堤本広大・中窪 翔・堀田 亮『認知症予防のための
運動効果とこれからの課題』分科学会シンポジウム9(日本予防理学療法学会)理学療法学
第42巻第8号 811~812貢(2015年)
<https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/8/42_42-8_104/_article/-char/ja/>
《参考URL》
・国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」
<http://www.ncgg.go.jp/kenshu/kenshu/27-4.html>
《参考URL》
・秋山 治彦 日本神経病理学会 東京都精神医学総合研修所 『アルツハイマー病』
(2006年2月)
<http://www.jsnp.jp/cerebral_12.htm>
《参考・引用文献》
・Erickson KI, Voss MW, PrakashRS, Basak C, Szabo A,Chaddock L, Kim JS, Heo S, Alves H, White SM Wojcicki T, Mailey E, Vieira VJ, Martin SA, PenceMB, Woods JA, McAuley E, Kramer AF.(2011)Exercise training increases size of hippocampus andimproves memory. PNAS 108(7), 3017-3022.
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