2019年12月27日 6:08 PM

『第93回理学療法通信』

糖尿病予防について(2)

今回は、2型糖尿病について少し詳しくご紹介していきたいと思います。

 

2型糖尿病の特徴

 2型糖尿病は、環境や遺伝的なものによって起こるとされています。また、食べ過ぎや運動不足によってもインスリンの働きが悪くなります。食べ過ぎや運動不足が原因でインスリンの血糖値を下げる働きが悪くなると、体はインスリンを欲しがるようになります。そのような状態の時に、食べ過ぎが続いていると、ブドウ糖が細胞に吸収されず、脂肪としてため込まれ肥満になります。そして、肥満になるとインスリンの効きが悪くなり、さらに悪循環を引き起こします。

 

2型糖尿病の悪循環を改善する方法

 食事療法と運動療法を組み合わせて、規則正しい生活を送りましょう。食事療法だけでは効果がないため、両方を意識して行うようにしましょう。

 

食事療法ってどうやるの?

 食事療法の目的は、食べ過ぎをなくすために、食事の量や食べ方に気を付けて、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)の負担を軽くすることにあります。一日の摂取カロリーを把握するために、自分の標準体重と身体活動量について知りましょう。

 

●まずは、自分の標準体重を知って、標準体重を目安に維持しましょう。

         標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22

   (例) 身長153cmの方の標準体重:51.4(kg)

             身長158cmの方の標準体重:54.9(kg)

             身長160cmの方の標準体重:56.3(kg)

             身長170cmの方の標準体重:63.5(kg)

 

あなたの一日の身体活動量はどのくらいでしょうか?

             安静臥床・・・寝たきりの老人など:20kcal

             軽い仕事・・・・デスクワークなど:30kcal

             普通の仕事・・・サラリーマンなど:35kcal

             体力を使う仕事・・・・力仕事など:40kcal

 

 

             ※体重1kgあたりの必要なエネルギー

 

●1日の摂取カロリーを把握し、エネルギーの摂りすぎに注意しましょう。

1日の食事の摂取カロリーは、体格(身長・体重)と身体活動量で決まりますので、上の数字を当てはめて計算します。

(例)・身長158cm・デスクワークの場合

     標準体重54(kg)×30(kcal)=1620kcal

   ・身長160cm・サラリーマンの場合

     標準体重56(kg)×35(kcal)=1960kcal

 

★ しっかり計算できればいいですが、面倒な方は、ある程度の標準体重を把握して、腹八分で辞め

  ておけば大丈夫です。重要なのは、続けることが大切です。

 

●その他、食事療法の注意点

・バランスの良い食事を心がける

   好きなものを好きなだけ食べるのではなく、バランスよく食べましょう

・朝食・昼食・夕食は決まった時間に食べましょう。

   食事の時間が不規則であったり、朝食を抜くなど1日3食摂らなかったりすると、栄養を脂肪とし

   て 蓄えようとする働きが強くなり 肥満になりやすくなります。

(その他)

 食事療法では、よく噛んで食べることや、寝る前に食事やお菓子を食べないことなど毎日の小さな

 積み重ねを継続することが大切になります。

 

運動療法はどうやる?

運動療法の目的は、日常的な運動を実施することで、血糖値を下げてインスリンの効きがよくなります。

 ●ウォーキングなどの有酸素運動

・ウォーキングなら9000歩、エアロバイクなら40分

・週3回以上行うことが望ましいとされており、時間のある方は、1日20~60分をめやすに行うといいそうです。でき

れば毎日行い、週に150分以上行うと運動効果が発揮されやすいとされています。

・「楽ちん」~「ややきつい」程度の負荷がより運動効果を発揮しますが、無理なく続けられる範囲  で実施することがい

いそうです。

 

 

●レジスタンス運動(筋肉に抵抗をかけながら反復して行います)

・例えば、スクワット・踵挙げ・腕立て伏せ・腹筋など、筋肉に負荷をかけて

 基礎代謝量をアップさせ、エネルギーを消費しやすい体をつくりましょう。

・毎日実施しないことが望ましく、週2~3回がいいとされています。

・1つの運動を8~10回実施し休憩しながらそれを3回行います。

他の3~4種類の筋力トレーニングと組み合わせて行うといいそうです。

【スクワット】10回×3回(合計30回)

【踵揚げ】  10回×3回(合計30回)

【腕立て伏せ】10回×3回(合計30回)

【腹筋】      10回×3回(合計30回)

 

※スクワットなどは、膝を曲げる角度を調整して負荷をつけると良いそうです。

    ただし、スクワットは運動方法を間違えると膝に痛みが出てしまう恐れがあるため、椅子からの立ち上がりなどに運動を

 変更するなど工夫が必要です。

 

日常生活の活動量を心掛けて多くする

・1日のなかで、5分でも10分でもいいから運動を実施し、それを数回行いましょう。

・運動時間が取れなかったり、忙しい方は時間を分けて運動しても、合計時間が週150分以上であれ

   ば、運動効果を発揮できるそうです。

<日常生活上の運動>

□ 家事をこなす        □ エレベーターではなく階段を利用する

□ 自動車に乗る時間を少なくして、徒歩や自転車に乗る機会を増やす

□ 立ち止まっているときに踵挙げを行う

 

■運動療法の注意点

・準備体操をしっかりおこなう

・膝の痛みを感じたら、その運動は中止

・体調の悪いときは無理をしない

・長く続けることが大切なので、強い負荷や疲れが出てしまうような運動は避ける

・動きやすい靴や服装で実施する

・一生懸命運動するのではなく、気軽な気持ちで行う

 

以上、2型糖尿病の食事療法と運動療法について、ご紹介しました。食事も運動も毎日、コツコツ意識して行うことで、肥満を防止し、糖尿病予防に努めましょう。

2019年11月6日 7:21 AM

『第92回理学療法通信』

糖尿病予防について(1)

糖尿病予防について話を進めるにあたって、今回は、糖尿病とはどういうものなのかを簡単にご紹介したいと思います。

■はじめに

通常、私達は食べ物を食べてそれをエネルギーに換えて体を元気に動かしています。少し、詳しく説明すると、炭水化物(ブドウ糖のかたまり)が体に入って消化されると、肝臓で分解し、血液中に流れ出て、筋肉や脂肪、その他の細胞に栄養素がエネルギーとして取り込まれます。ブドウ糖が細胞にエネルギーとして取り込まれるためには、「インスリン」というホルモンが重要な役割を果たしており、インスリンの働きが悪いと栄養素は、細胞に取り込むことができなくなります。

 

インスリンの仕事

インスリンは、胃の裏にある膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島という組織のβ細胞(ベータ細胞)から分泌されています。インスリンの主な仕事は、食べ物として取り込んだブドウ糖を肝臓・腎臓・筋肉・脂肪などの細胞に取り込めるように働きかけてくれるものです。しかし、このインスリンの分泌量が少なかったり、その働きが悪いと、ブドウ糖を細胞に取り込むことができず、血液中に「糖」が増えてしまいます。この状態を「高血糖」といいます。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンでもあるため、インスリンの働きが悪いと血液中に糖が沢山ある状態になってしまいます。

 

糖尿病ってなに?

糖尿病とは、このインスリンの分泌不足や働きが悪いことによって、血液中のブドウ糖が異常に増え、それが慢性的に続いている状態のことをいいます。

 

■血糖値が高い状態だと何が悪いの?

血糖値が高い状態が長く続いてしまうと、様々な合併症(動脈硬化・心筋梗塞・肝硬変など)が進みます。

また、糖尿病と診断され、血糖値が高い状態が長く続き、血糖値を下げたりすることができないと以下の重篤な障害をもたらします。

★糖尿病の3大合併症

・糖尿病性神経障害(痛みを伴う感覚異常)

・糖尿病性網膜症(視力低下や視野狭窄、最悪の場合失明)

・糖尿病性腎症(腎機能低下、悪化すると透析)

 

糖尿病の検査はどういったものがあるのでしょうか?

初回に血液検査を実施し、血糖値を測定します

空腹時に検査するものと、時間を指定しないで血糖値を測定するものがあります。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

HbA1cとは、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映するもので、日頃の血糖の状態を

みるための目安となるものです。

75g経口ブドウ糖負荷試験

空腹時の採血と同時に75gのブドウ糖を水に溶かしたものを飲み、30分、1時間、2時間後に採血し血糖値を図るものです。

★自覚症状の確認

口渇、多飲、多尿、ダイエットしてないのに体重減少

医師に糖尿病性網膜症と診断されたことがある場合

自覚症状は、目がかすむ、視力低下、飛蚊症(蚊が飛んでるように見える)、視野に墨がかかったように一部が黒くなる、視野狭窄などがあります。

 

これらの検査結果を組み合わせて、それぞれが糖尿病型の基準値となれば「糖尿病」と診断されます。

※ 今回は、糖尿病の基準値については、話が難しくなるので省かせて頂きます。

 

糖尿病の種類

1型糖尿病(すい臓のβ細胞の破壊によるインスリン分泌不足が主な原因)

・特に小児や若い人にみられる

・急激に症状が出て、糖尿病になることが多い

・すい臓のランゲルハンス島のβ細胞の破壊によるインスリン分泌不足が主な原因

・やせ型が多い

2型糖尿病(インスリン分泌不足と食べ過ぎなどの肥満により脂肪の蓄積などが原因)

・中高年に多い

・症状がでないこともあり、気が付かないうちに進行する

・肥満型も多いが・やせ型の方もいる

・生活習慣(食べ過ぎや運動不足)や遺伝的な影響によるインスリンの作用不足

妊娠糖尿病

妊娠中、胎盤のホルモンによりインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値が上がりやすくなります。多くの場合、高い血糖値は出産後に元に戻りますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来、糖尿病になりやすいと言われています。

 

以上、糖尿病について簡単にご紹介してきましたが、糖尿病の中でも、2型糖尿病については、食事や運動など生活習慣の見直しによって予防することができます。そのため、次回は、2型糖尿病について少し詳しく説明していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

2019年9月11日 3:58 PM

『第91回理学療法通信』

『誤嚥性肺炎について(4)』

今回は、誤嚥性肺炎を防止するために、当施設でも実施している体操について、ご紹介したいと思います。また、昼食前に実施することで、ご飯を美味しく食べられるよう運動しています。

●リハビリ体操

 当施設で実施しているリハビリ体操の目的は、肩まわりの動きをよくするための運動でもありますが、大きな声で数を数えることで、唾液(だえき)が沢山出るのを促しています。声を出して頂き、唾液が溜まった頃に、声をかけてゆっくり飲み込んでもらい、飲み込む練習も同時に実施しています。ここでは、口腔機能を高める運動の一部をご紹介します。

★両手を組み天井に向けて手を伸ばし脇の外側を伸ばします。(大きな声で10秒数えます)

■この運動は、10回数え終えたら、1回1回手を下ろして次の運動を実施しましょう。

■手が挙げられない方は、胸の高さで行なって頂き、麻痺のある方は片手で行なって頂いております。

       

 手を上に挙げて脇の      左に倒します        右に倒します

 下を伸ばします

★両肩を耳に付けるようにすくめ、上に挙げたらゆっくり肩を下ろします。                     (10回数えながら実施します)

 

■1回1回挙げて下ろすを繰り返します

                    

★両肘を曲げた状態で肩甲骨を回します。(前まわし10回・後ろまわし10回)

                   

●口腔体操

■口腔体操の前に唾液を一度、飲み込んで頂き、そのあとにお茶を飲んで口の中を湿らせます。

★唾液が沢山出る、ポイントがあり、そこを指の腹を使ってマッサージします。

初めは、唾液が出にくいですが、何回か繰り返すことで軽く押すだけで直ぐ出るようになります。

 

【耳の前の頬をぐるぐるマッサージします】

        

 

【親指で奥歯の内側から顎(あご)の下に向かって軽く押し上げながら移動させる】

                      

  矢印の方向に                親指の腹で、軽くあごを

   親指を移動させる        突き上げるように押します

 

★頬(ほほ)の筋肉を動かします。(ゆっくり回程度実施)

            

  頬を膨らませます                 頬を内側へ凹まします

 

★舌を出して動かします。(3~5秒程度保持)

                   

  舌を下に伸ばします              舌を左に動かします

                     

  舌を右に動かします         舌を上に動かします

 

★「パ」・「タ」・「カ」・「ラ」をそれぞれ5回連続して大きな声で発声します。

・ラッパの「パ」を大きな声で「パ」「パ」「パ」「パ」「パ」

・たぬきの「タ」を大きな声で「タ」「タ」「タ」「タ」「タ」

・カラスの「カ」を大きな声で「カ」「カ」「カ」「カ」「カ」

・ラッパの「ラ」を大きな声で「ラ」「ラ」「ラ」「ラ」「ラ」

 

食事の前にしっかり運動することで、食べる動作に必要な筋肉を積極的に動かし、唾液がたくさん出るように心掛けましょう。毎日行うことで、頬の筋肉も柔らかくなり、ご飯が美味しく食べられるようになるでしょう。

2019年6月26日 6:12 PM

『第90回理学療法通信』 

『誤嚥性肺炎について(3)』

 高齢であったり脳梗塞など様々な原因により、噛んだり飲んだりする機能が低下すると、食べ物を口から食道へスムーズに送り込むことが難しくなります。今回は、食べ物を目で確認してから、食べ物を飲み込み「ごっくん」するまでに起こりうる問題について対処方法も含め、いくつかご紹介したいと思います。

【食べ物を見て確認する時期】

①認知症であったり、食欲を自らコントロールできない方の場合、食べ物を食欲に任せて手掴みで口に運び、口の中いっ ぱいに詰め込んでしまうことが

  よくあります。食欲が旺盛でご自身で食べ方を調整できない方の場合、むせ

   込みや誤嚥に繋がってしまう恐れがあります。

★対処法

・はじめからご飯やお味噌汁、おかずをテーブルの上に並べず、小さい器で

 少量ずつ提供し、かきこみを防止します。

・スプーンの大きさを小さめのスプーンに変更し、一度に多くの食べ物を

 取り込まないよう工夫します。また、箸が使える方は箸を使って頂くなどの工夫も大切です。

・口に入れた食べ物をしっかり飲み込めたかを確認することも誤嚥防止につながります。食べ物を

 しっかり飲み込めていると思っていても、まだ口の中に溜め込んでしまっている場合もあるため、

 介助する場合は、時々、大きく口を開けてもらい、口の中に食べ物がないか確認することも重要

 です。

②食欲とは別に食べ物が食べ物であることを認識できていない場合や、食べ物を口に運べない場合も

 あります。この場合、食べ物を食べ物と認識できているかを確認することも重要です。

★対処法

・まずは、大好物や好みのものを探り、食べられるものから提供してみましょう。

・食べ物をテーブルの上に提供しただけでは食べない場合があります。その場合には、ただ「食べて

ください」「おいしいので食べましょう」ではなく、その食べ物についてのエピソードなどを盛り込んだ話をしたり、話を盛り上げることで、意欲的になり食事(食欲)につながる場合があります。また、少しだけ食べ物を口に運んであげることで、目の前にあるものが食べ物であると認識する場合もあります。一度、目の前の物が食べ物と理解できればご自身で食べ続ける場合もありますので、目の

 前にあるものが食べ物であるということを理解して頂くことはとても重要です。

・食べ物の見た目や温度を工夫することや、匂いを嗅ぐのも有効とされています。

【食べものを噛む時期】

・口の筋肉や頬・舌などが上手く動かせないと、食べ物をこぼしたり、口の中に溜め込んでしまうこ

とがあります。また、唾液を適度に出すことができないと、口の中で上手に食塊(食べ物の塊)が作れず、口の中で食べ物がバラバラになってしまいます。バラけた食べ物を上手にノドの奥に送ること

 ができないと、食べ物の一部がノドに詰まり、むせ込みや誤嚥につながる場合があります。

対処する前に・・・

・まずは、普段の会話を観察し、口の動き・頬の動き・舌の動かし方・唾液の出かたを観察してみま

しょう。会話したときに、口の開き方が小さい方は食事の時も上手に口を開けられない場合が多い

です。また、言葉が不明瞭で呂律が回っていないような話し方をする方は、舌が上手に使えていません。会話のときに表情が乏しく普段笑わない方は、頬の筋肉を使う機会が少ないので、頬が硬くなり

 唾液が出にくい場合がほとんどです。

対処法

・普段から、会話を沢山するように心がけましょう。話題が浮かばないときは、本や新聞などを大き

  な声を出して読むことをお勧めします。もし、口が上手に開けられないのであれば、頬を蒸しタオル

  などで温めたり、お風呂上りにマッサージしてから本を読むと良いでしょう。

【食べ物を飲み込む時期】 

・食べ物をノドの奥で「ごっくん」と飲み込むためには、舌の奥の部分を口の天井にある粘膜の上に

 ぴったりと貼り付けることができないと「ごっくん」できません。

対処法

・普段から唾液を飲む練習をしましょう。唾液を飲む段階でむせる場合は、食べ物を食べた時もむせ

ます。「ごっくん」するタイミングが上手に取れないと、むせ込みなどの危険性が高くなります。

 

次回は、誤嚥やむせ込みを予防するために、当施設で実施している運動についてご紹介したいと思います。

 

 

2019年5月4日 7:05 AM

『第89回理学療法通信』

『誤嚥性肺炎について(2)』

前回は、誤嚥性肺炎についてご紹介させていただきました。今回は、食べ物が口から食道へ入るまでの一連の流れ(動作)について簡単にご紹介させて頂きます。この一連の動作がきちんとできていないと、誤嚥性肺炎になる確率が高くなります。

 

【先行期あるいは認知期】   

・食べ物を見て食べ物と認識する

この時期は、目で食べ物を確認し、匂いを嗅いで、食べ物の形状などを認識する時期です。

・おいしそうな匂い。早くこの食べ物を食べたい

・食感が固そうだからしっかり噛もう

・お茶が熱そうだからゆっくり飲もう

・昔、食べた食べ物で苦手な食べ物だから食べるのをやめようかな等

 

【準備期・咀嚼期(そしゃくき)】

・食べものを噛む

食べ物を口に入れた後、歯、頬の筋肉、顎(あご)の筋肉、舌を使い、食べ物を細かく噛み砕きます。そして、食べ物と唾液を混ぜ合わせ、口の中で飲み込みやすいカタチ(形状)を作る時期 です。また、飲み込みやすくした食べ物の形状を食塊(しょっかい)と言います。

 

【口腔期(こうくうき)】 

・食べ物をノドの奥に移動させてゴックンまで

この時期は、噛み砕いた食べ物を舌でノドの奥へ送ります。ノドの奥に食べ物が送られると舌の奥の部分が口の粘膜の天井部分にぴったりと張り付き「ごっくん」され、食べ物が飲み込まれます。

 

【咽頭期(いんとうき)】

・食べ物を飲み込んだ後、食道へ食べ物が落ちるまで

この時期は、食べ物がノドの奥を通過し、食道へ流れていきます。食べ物がノドの奥を通過する際、口の奥の粘膜とノドの奥が接触し、鼻への通路を塞ぐことにより鼻への逆流を防ぎます。また、普段は呼吸をするために気管は開いていますが、食べ物がスムーズに食道を通過するためには、気管にフタをする必要があります。このフタの役目を果たすのが、喉頭蓋(こうとうがい)と言い、食べ物がスムーズに食道を通過する際に、とても重要な働きを担っています。

 

【食道期】

食べ物が、蠕動運動(ぜんどう運動)によって食道を流れていく時期です。

蠕動運動は意識的に行われない不随意運動で行われています。

 

 

2019年3月29日 12:02 PM

『第88回理学療法通信』

『誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)について(1)』

高齢者や脳卒中の後遺症などにより、口の筋肉や喉(のど)の機能が衰えたり、麻痺などによって、食べ物を噛んだり、唾液や飲み物を上手に飲み込むことができないことを嚥下障害(えんげしょうがい)といいます。誤嚥性肺炎はこの嚥下障害が主な原因で起こります。

 

【誤嚥(ごえん)とは】

嚥下障害が原因で、食べ物や飲み物、唾液に混じった口腔内の雑菌が、胃につながる食道に流れるのではなく、誤って肺へつながる気管に入ってしまうことを誤嚥といいます。

 

【誤嚥性肺炎とは】

食べ物や飲み物、唾液等が気管に入ってしまうことを誤嚥といい、誤嚥が原因で引き起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。

 

【誤嚥性肺炎の症状】

○ 数日間熱が出る    ○ 呼吸が苦しそう       ○ 元気がない

○ 痰が出る       ○ 呼吸の雑音が聞こえる

 

【こんな症状ありませんか?】

以下の項目は、誤嚥性肺炎になりやすいサインです。この項目に当てはまる場合、口や喉のまわりの筋肉を使う運動や、飲み込む練習が必要です。また、食べ物を食べやすくしたり、飲み物を飲み込みやすくする食事の工夫も必要です。

□ 食事中によくムセる(咳をする)   □ 食べ物をよくこぼす

□ 飲み物が口からこぼれる             □ 食後に声が嗄れる

□ 飲み物をゆっくり飲まないと飲めない □ 唾液を飲んだだけでもムセる

 

【こんな生活してませんか?】

□ 固い食べ物を殆ど食べない     □ 普段、あまり大きな声を出さない

□ 歯磨きが嫌い           □ 食べ物を噛まないで飲み込む

□ 食事中に食べ物をかきこむ     □ 食事は一人で食べる

□ 食事中、口の中が食べ物でいっぱい □ 姿勢が傾き、食べづらい

□ 他の人とあまりお話しをしない   □ 食事中に黙って食べる

□ 全体的に運動不足         □ 笑わない

 

上記の項目に当てはまる方は、唾液分泌の低下や口のまわりや喉の筋力の低下につながりやすい生活習慣です。誤嚥性肺炎の原因となる嚥下障害リスクを事前に予防し、これから先、食事を楽しく美味しく食べるためにできることを今のうちからしておきましょう。

 

 

 

 

2019年3月1日 5:28 PM

『第87回理学療法通信』

『 認知症について(4)』

軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)と認知症予防

軽度認知障害(以下:MCI)は、大脳皮質の萎縮(脳の容量減少)や神経細胞の減少などにより、

医者から「認知症」と診断されるより前の状態を指します。年相応の認知機能低下よりも認知機能が低下しているなど、高齢者の10%~20%がそれに該当すると言われています。このMCIの場合、何もしなければ認知機能の低下がそのまま進行してしまいますが、この段階で予防することができれば、回復する可能性が高いと言われています。

一方、医師から「認知症」と診断されてから認知症予防の食生活や運動を行っても、現時点では、

改善しにくいため、MCIの時期あるいは、MCIになる前から予防することが大切とされています。

 

認知症予防と運動効果について

認知症の方の運動効果については、実際のところ研究段階です。特に、MCIの方を対象とした運動

効果についての研究は現在進行形の状態であり、多くの医療機関や介護施設で取り組みがなされています。ある施設では、複合的な運動プログラム(準備体操としてのストレッチ・有酸素運動・筋力強化練習・二重課題運動など)を通じてMCIの高齢者の認知機能の低下抑制や記憶力向上の効果が認められたという研究結果も報告されています。しかし、複合的な運動のため、どの運動が認知症予防に最適なのかということは、まだわかっていません。しかし、積極的に運動した場合と運動をしなかった場合では、たった半年で脳容量(脳萎縮)に大きな差みられたそうです。

 

認知症に有効とされる運動

2011年の研究では、有酸素運動とストレッチで比較し、有酸素運動で記憶を司る「海馬」の体

積が2%増加したという結果が出ています。そして、ストレッチだけでは逆に「海馬」の体積が減少したとのことです。つまり、有酸素運動を行うことで、適度に心拍数を上昇させ、全身の血流はもちろんの事、「海馬」や「前頭前皮質」など記憶や認知機能を司る脳血流などが改善されたことにより、認知症予防には無酸素運動より有酸素運動が有効だということがわかっています。その他、有酸素運動だけではなく、有酸素運動と同時に認知機能への刺激活動を同時に行うことも、認知症予防に最適であることも多く知られています。

 

★ 認知症に良いと言われる有酸素運動

(例)ウォーキング/エアロビクス/水泳 など  (1日30分/週3回程度)

 

★ 有酸素運動と認知機能への刺激を同時に行う活動

(例)コグニサイズ/料理/そろばん/デュアルタスク運動(二重課題運動)

 

【コグニサイズとは】

  国立長寿医療センターが開発し、推進している運動で、認知症予防を目的とした有酸素運動と

  脳活性を促す認知課題を組み合わせた運動

【デュアルタスク運動とは】

  有酸素運動と認知課題を同時に促すもの

(例)・ウォーキングしながらしりとりを行う  ・足踏みしながら野菜の名前を沢山言ってみる

 

 

●運動は、楽しみながら行うのがいいそうです。普通の散歩でも、お友達と話をしながら行って、 できるだけ長く続けられるように心掛けましょう。

 

 

《参考URL》

・牧迫飛雄馬・島田裕之・土井剛彦・堤本広大・中窪 翔・堀田 亮『認知症予防のための

 運動効果とこれからの課題』分科学会シンポジウム9(日本予防理学療法学会)理学療法学

 第42巻第8号 811~812貢(2015年)

<https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/8/42_42-8_104/_article/-char/ja/>

《参考URL》

・国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」

<http://www.ncgg.go.jp/kenshu/kenshu/27-4.html>

《参考URL》

・秋山 治彦 日本神経病理学会 東京都精神医学総合研修所 『アルツハイマー病』

(2006年2月)

<http://www.jsnp.jp/cerebral_12.htm>

《参考・引用文献》

・Erickson KI, Voss MW, PrakashRS, Basak C, Szabo A,Chaddock L, Kim JS, Heo S, Alves H, White   SM Wojcicki T, Mailey E, Vieira VJ, Martin SA, PenceMB, Woods JA, McAuley E, Kramer AF.(2011)Exercise training increases size of hippocampus andimproves memory. PNAS 108(7), 3017-3022.

 

 

 

 

2019年2月6日 10:07 AM

『第86回理学療法通信』

『認知症について(3)』

これまで、認知症についてご紹介してきましたが、今回は一般的に効果的とされている認知症予防についてご紹介したいと思います。

■認知症は「生活習慣病」とされている?!

・多くの研究の中で、認知症は「生活習慣病」という考え方が広まっています。例えば、脳血管性認知症は、脳梗塞の原因となる高血圧や動脈硬化などから生じるため、食生活を見直したり、適度な運動を行うことで認知症になるリスクを軽減できるとされています。

■認知症予防に良いと言われる食べ物

★アルツハイマー型認知症・レビー小体認知症には「抗酸化物質」が有効とされている。

<抗酸化物質をたくさん含む食材>

・ウコン(ターメリック)、ポリフェノール(ワイン)、コーヒー(香料がついてない物)

★脳血管性認知症には「脂肪酸」の摂取に注意が必要で、「脂肪酸」は生活習慣病の発症や

予防に深く関連している。

不飽和脂肪酸(魚油や植物油に多い)

大豆油、ゴマ油、豆腐、油揚げ、味噌などに多く含まれており、植物の油や魚の脂肪に多く含まれます。摂り過ぎは、肥満や脂質異常症などの原因になりますが、適量であれば中性脂肪やコレステロール低下作用をもち、動脈硬化症予防効果があるとされています。

飽和脂肪酸(動物性の脂質に多い)

ベーコン・ソーセージ・チーズ・バターなどの食品に多く含まれており、肉や乳製品の脂肪に多く含まれます。過剰摂取で動脈硬化や脳卒中のリスクが高くなると言われています。

トランス脂肪酸(天然の植物油にはほとんど存在せず、人工的に作られた硬化油)

マーガリン・パン・ドーナツなどの食品に含まれており、これを長期的に摂取していると、動脈硬化が起こり虚血性心疾患のリスクが高くなり、認知機能の低下などが問題視されています。

認知症に良いと言われる脂肪酸

・オリーブオイル:善玉コレステロールを下げずに悪玉コレステロールを下げる作用

・えごま、亜麻仁油:中性脂肪、コレステロールを下げる効果がある。

■ その他、認知症に良いとされる食べ物

【ビタミンCを含む食材】

・野菜類:赤ピーマン、芽キャベツ、パセリ、ブロッコリー

・果物類:アセロラ、いちご、キウイ、デコポン

・魚介類:たらこ、すじこ、いくら

【ビタミンEを含む食材】

ビタミンEは野菜類・果物類・魚介類に多く含まれているそうです。

・野菜類:モロヘイヤ/赤ピーマン/自然薯/大根葉

・果物類:うめ/アボガド

・魚介類:あんこうのきも/すじこ/いくら

食生活を見直し、適度な運動を行うことで生活習慣が健康的に改善すれば、動脈硬化や高血圧の予防につながります。毎日の心がけで認知症リスクを低下することができるので、早速生活習慣を見直してみましょう。

【引用文献】

・大友英一 (2005年)『毎日できちゃうボケ防止』 求龍堂.

・参考URL

医療法人社団 緑会 佐藤病院 ホームページ「認知症予防の食事」

<http://midori-satohp.or.jp/article/41.html>(アクセス日:2018.12.31)

・参考URL

旬の食材百科 ホームページ 「ビタミンE」「ビタミンC」

<http://foodslink.jp/syokuzaihyakka/Vitamin/eiyou/ehtm>(参照2018.12.31)

<http://foodslink.jp/syokuzaihyakka/Vitamin/eiyou/chtm>(参照2018.12.31)

2019年1月9日 5:13 PM

『第85回理学療法通信』

『認知症について(2)』

前回は、認知症のタイプについてご紹介しました。今回は、失禁や歩行障害、記憶力の低下などの認知症と似た症状が出現しても、治療を行うことで認知症状が軽減する「治療可能な認知症」についてご紹介したいと思います。

★治療可能な認知症

■ビタミンB1B12欠乏症

アルコールを沢山飲みすぎていたり、食事が充分に摂れていない場合、身体に必要なビタミンが不足してしまうことで、起こります。

●ビタミンB1欠乏症

脚気(しびれ・むくみ・血圧低下・心臓肥大)、ウェルニッケ脳症(せん妄・歩行障害・眼球運動障害)などの症状がみられます。

●ビタミンB12 欠乏症

高齢者(胃酸の分泌が低下しやすい)や手術で胃を切除した場合など、ビタミンB12 が吸収されにくくなります。症状は、貧血やせん妄、意識障害などがみられます。

【改善方法】ビタミンを摂取する事で改善されます。

ビタミンB1を多く含む食品:豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類

ビタミンB12を多く含む食品:豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳

 

■正常圧水頭症

●脳脊髄液が脳室に溜まり、脳室が拡大して周囲の脳が圧迫されて起こるものです。特徴は、尿失禁や歩行障害(すり足)が見られます。

【改善方法】手術により髄液を抜くことで改善します。

 

■硬膜下血腫

●転倒や外傷により、脳を覆っている膜(硬膜とくも膜)の間の静脈が出血し、血の塊(血腫)が脳を圧迫して起こるものです。

【改善方法】血腫が小さければ自然に吸収されますが、血腫が大きい場合には手術にて血液を吸引することで改善します。

 

■甲状腺機能低下症                         

甲状腺ホルモンの分泌量が不足して体の活動力が低下するものです。症状として、食欲がないのに体重が増加する、浮腫み、皮膚の乾燥や寒がりなどがみられます。

【改善方法】甲状腺ホルモンを補充することで改善する

 

※せん妄:意識障害の1つで、不安・イライラ・不眠・興奮して暴れる・幻覚などの症状が出現する。また、夕方から夜間に見られやすい。

 

 

日常生活の中で、認知症と似た症状がみられるが、受診せずに放置してしまうと、症状を長引かせてしまうこともあります。「治療可能な認知症」なのかどうかを判断するためにも、症状がみられた時に、できるだけ早期に受診することが大切です。また、日常生活の生活状況をしっかり医師に伝えることで、「治療可能な認知症」であるのか「認知症」なのかを医師が判断しやすい貴重な情報となるため、病院へ受診した際には、身近な人が状況をできるだけ細かく伝えることも大切です。

 

2018年12月8日 1:34 PM

『第84回理学療法通信』

『認知症について(1)』

近年、私たちにとって認知症は身近なものになってきました。認知症といっても様々なタイプがあり、今回は、代表的なものについてご紹介したいと思います。

 

 

●脳血管性認知症

(のうけっかんせい認知症)

 

<原因>

主に動脈硬化(血管が硬くなること)が原因となり、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)により、脳の神経細胞が死滅することで起こります。

<特徴>

□ 見当識障害:時間・場所・人の名前を忘れ自分の置かれている状況がわからない

□ 物忘れや記憶障害:食事をしたことを忘れる・  薬を飲んだことを忘れるなど

□ 歩行障害や言語障害が伴う:人によっては麻痺や言葉が上手く話せないこともある

□ 実行機能障害:物事の計画を立てて順序立て行うことができない(料理を段取りよく作れない)

□ まだら認知症:認知症状がみられる時とみられない時がある

□ 脳卒中を再発するとその都度悪化する:脳卒中は再発する場合があるため、認知機能もその都度

                                                          低下する

●前頭側頭型認知症

(ぜんとうそくとうがた認知症)

<原因>

前頭葉(感情を司る領域)と側頭葉(聴覚や記憶を司る領域)の萎縮(脳が縮むこと)により起こります。

<特徴>

・同じ事を何度も繰り返す:毎日、本人の好む行動パターンがありそれを実行しないと気が済まない

・食べ物や行動など異常な執着がある:冷蔵庫に食物を次から次に詰めこみ、物が腐っているのに気付かない

・集中力や自発性がなくなる:飽きっぽい・じっとしていられない・興奮しや すい・抑制が効かない

・万引きなど反社会的な行動が見られる場合もある:人のものを盗ったりする行動が見られる

 

●アルツハイマー型認知症       

 

<原因>

特殊たんぱく質(アミロイドβ・タウ)が脳に溜まることが原因とされており、神経細胞が壊れて死んでしまうために起こります。記憶を司る場所(海馬)の血流が悪くなり記憶障害などが目立つようになります。

<特徴>

・体験そのものを忘れてしまう物忘れ:食事をしたことを忘れてしまう

・判断力の低下:真夏に冬服を着る・調理の際、調味量を入れすぎてしまう

・失行・失認・失語:身近な物の名前がわからない・ズボンを頭に被る・

          身近な物の使い方が わからない

・時間・場所・人を忘れる:家族の名前を忘れる、自分がどこにいるかわからない

・行動・心理症状が出現する:人によっては、物取られ妄想・徘徊・昼夜逆転などがみられる

 

 

 

●レビー小体型認知症

(レビーしょうたいがた認知症)

<原因>レビー小体という特殊たんぱく質が大脳皮質や

脳幹(生命活動を司るところ)に異常に蓄積されることで起こる。

<特徴>

・幻覚・幻視:壁のシミが虫に見える・子供が沢山いるなど実際には見えないものが見える

・日内変動がある:一日の中で、頭がハッキリしている時と、ボーっとした時がある

・うつ症状:ふさぎ込んでしまい活気がなく、何もしたくない状態になる

・睡眠中の異常行動:睡眠中に暴れる・大声を出す、眠れない

・パーキンソン症状と似た症状がみられる:突進するように歩く・震える(振戦)・動作が緩慢

                         小刻み歩行

 

 

 

 

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