2020年11月4日 12:32 PM

『第98回理学療法通信』

質問者からの相談

母は、86歳の介護3で軽度の認知症があります。食事について質問ですが、普段はスプーンを使用できますが、上手に使えず手づかみで食べてしまいます。認知症が進んでしまったとは思いますが、何かいい方法はないでしょうか?

理学療法士からのアドバイス

普段は、スプーンが使えるということがポイントかと思います。通常は箸で食事が出来ていたり、手掴みでも食べ物を口に持っていく事ができています。つまり、お母様は食べ物を食べ物と理解されているので、少しずつ食事動作の手順を促していきましょう。

まずは食事環境を整えましょう。

食欲に任せて手掴みで食べてしまうと、のどに食べ物を詰まらせたり、むせ込んでしまったりするので、できるだけ介助者がゆっくり順を追って食事を提供することをお勧めします。また、86歳という年齢からも、嚥下機能(食べ物を噛むことや飲み込むこと)が低下してきているので、ゆっくり召し上がって頂けるようサポートしましょう。

・食べ物は沢山提供せずに、少しずつ提供してみましょう。

目の前に、食べ物が沢山あると好きな物から手当り次第に手掴みで食べてしまう可能性があるので、

食事を提供する場合には、目の前にお皿を沢山並べるのではなく1つの小皿に食べ物を移して、

それに集中して召し上がってもらいましょう。

■お母様がスプーンを使わないときは、一緒に手伝ってあげましょう。

はじめの数口は、介助者がスプーンに食べ物をのせて口まで持っていき、食べ物をスプーンで食べると言うことを意識付けします。そのとき、スプーンにのった食べ物を目でしっかり見てもらうことも忘れずに行いましょう。

 ■スプーンで食べるリズムが整ってきたら

・一度、お母様にスプーンを手渡し、食べ物を掬って食べられるか確認しましょう。

・お母様がスプーンを使用せずに食べ始めたら・・・

介助者のスプーンをお母様に渡して手を添えながら一緒に食べ物をすくいます。肘が曲がるところまでサポートすることで、自然とご自身で口にいれることができるようになります。始めのうちは、介助者が誘導してあげて、動作を繰り返していくうちに、お母様の手の動きが出てきたら、それに合わせて介助者の介助量を減らしましょう。

・お母様が食べ物をすくうことに慣れてきたら、反対の手でお皿を持ってもらいましょう。

お皿を持って頂くことで、さらに食べ物に集中できるようになります。

 

2020年8月27日 8:24 AM

『第97回理学療法通信』

今回は、高齢者でもできる筋力トレーニング(肩から腕の運動)をご紹介します。

  • 運動を始めるまえは、前回同様、準備体操をして始めましょう。
  • 運動の途中で痛みを感じたら中止にしてください。

肩の上の筋肉を鍛える(上げ下げ10回、ゆっくり行う)

 

腕を水平に挙げて、肩の外側の筋肉を鍛える(10回×3回交互に行う)

     

                                                                                                                                                                                                                                                          ★肘を曲げて、二の腕の筋肉を鍛える(10回×3回交互に行う

          

                                                                                                                                                                                                                                                                                               ★指と手の筋肉を鍛える(手を組み換えて10秒×3回)

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★両手で乾いたタオルを絞り、握力を鍛える(持ち手を変えて10秒×3回)

                                                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                         ■最後に、手を上に挙げながら深呼吸を3回行い終わりにしましょう

 

              

 

 

 

 

2020年7月2日 1:10 PM

『第96回理学療法通信』

今回は、「高齢者でもできる筋力トレーニング」についてご紹介します。これからご紹介する方法は、重い負荷をかけず、自分の手や足の重みを利用し実施する方法なので、無理なく実施することができます。今回は、足の運動をご紹介します。

 

■運動を始めるまえに・・・

・準備運動をしっかり行ってから運動しましょう。

・肩、腰、膝など身体に痛みがある方は、無理せず運動を中止しましょう。

・膝痛や腰痛がある場合は、個人に合わせた体操があるので、専門家(理学療法士やアスレチックトレーナー、健康運動指導士等)のアドバイスを受けることをお勧めします。

●足の運動

★股関節の前・太ももの筋肉を鍛える(片方10回程度)

      

 

★太ももの外側の筋肉を鍛える(10秒×3回程度)

     

★太ももの内側の筋肉を鍛える(10秒×3回)

      

 

★太ももの前を鍛える(5回~10回)    ★ふくらはぎの筋肉を鍛える(10回)

          

★スネの前の筋肉を鍛える(10回)

                  

■運動終了後は、深呼吸をして呼吸を整えて終わりにしましょう。

2020年5月8日 10:28 AM

『第95回理学療法通信』

★ 今回の質問

◆肩こりと首が痛いので、何か改善方法はありますか?

◆肩こりがひどいので、仕事の合間(隙間時間)にできる体操や、つぼ押しなどの方法が知りたい。

◆肩こりがひどく頭痛がするので、予防法や肩こりに効果的な簡単な体操を教えて欲しい。

 

■ まずはあなたの生活習慣をチェックしてみましょう

□仕事はパソコンなどを扱うデスクワークだ    □体が硬く、柔軟性がない

□肩こりは昔からある                 □運動不足であると自覚している

□肩が痛いので、肩を叩いたり揉んでいる        □目が疲れたり、頭痛や吐き気がする

□車の運転時間が長い              □腕が頭の上まで挙がらない

□猫背である                  □入浴はシャワー浴が多い

チェック項目にたくさん該当する方は以下の運動を実施してみましょう。

 

■日頃から全身運動を行い、体を温める

肩こりは肩の周りの筋肉(肩甲骨も含む)と頭や首についている筋肉の緊張や血行不良により生じるといわれています。また、重たい頭を支えるためには適度な筋の緊張と肩周りも含む全身の柔軟性を高めることが大切です。また、筋肉が温まっていないと、筋は血行不良を起こしやすく、柔軟性が低下することから、筋肉を温めることをまずは実施してみましょう。

 

★ 身体(筋肉)を温める方法

●シャワー浴でなく浴槽にしっかり浸かる。(10分程度)

●ウォーキングやエアロバイクなど有酸素運動を行う(20分以上)

●立った状態で足踏み、ランニング(5分程度×2~3回/日)

●ラジオ体操を実施してみる

 

★ 柔軟性を高める運動

今回は、休み時間や仕事の合間でも実施できるようその場で行う運動をご紹介させていただきます。運動効果をさらに向上させるためには、時間のある時に、お風呂上りやウォーキング後に実施するとより効果的です。

 

① その場で足踏み、もしくはランニング(5~10分)

② 肩甲骨を上に挙げて5秒程度そのままで保ち、ゆっくり肩を下ろす。(5~10回)

      

 

③ 肩甲骨を回します。(肘を回すようにすると肩甲骨もしっかり回すことができます)

④ 脇の下と背中の筋肉を伸ばします。(10秒×3回程度)

     

 

⑤ スネを伝って足首まで手を伸ばしゆっくり背中を伸ばします(10秒程度×3回)

⑥ 骨盤を動かす(各3回程度)

      

⑦ 背骨をねじります。(5秒×3set

       

 

⑧ 肩を入れて太ももの内側の筋肉を外側に伸ばします(10秒×3set

          

⑨ 太ももの前を伸ばす(10秒程度左右交互に)

 

⑩ 太ももを胸に近づけて筋肉をストレッチする(10秒程度左右交互に)

 

 

2020年2月27日 7:40 AM

『第94回理学療法通信』

今回からの理学療法通信では、皆さまの日ごろ感じている様々な疑問や質問に一つずつ答えていこうと思っています。

 理学療法士に聞いてみたいこと

★質問者より相談

父は80歳でやせ型、長身の体型です。車椅子に乗っている時、膝が上がった姿勢になり、座面が下がっているようになります。本人は自走すると、腹筋が疲れると言いますが、どのように修正すれば良いのでしょうか?

車椅子が調整できるタイプなら、高さを調整してみましょう。

お父様のように、膝が上に上がってしまう原因の一つは、

足置き(フットレスト)の高さが高いことが考えられます。

もし、購入した車椅子が高さ調整のできるタイプのもので

あれば、フットレストの高さを下げて調整しましょう。

 

■腹筋が疲れるのは、いくつか理由がある!

★充分な体の動きや筋力が確保されていないと体を曲げて代償する。

車椅子を駆動するためには、手の力が必要不可欠です。手の動きが悪いと、手を動かす代わりに体を曲げて腹筋を利用し車椅子を前方へ移動させようとしている可能性があります。

 

車椅子の座面の奥行が短いと体が前傾する

座面の奥行が短すぎると体が前傾し、駆動時に体を大きく前に倒すことになるため、腹筋が過剰に使われることになります。

 

小さい車椅子を使用すると、バランスをとるため体を前傾する。

車椅子のタイヤが小さいなど、お父様の身体に合っていない小さいサイズの車椅子を使用すると、体を前傾しバランスをとり、その結果腹筋が疲れるのではないでしょうか?

■車椅子を購入するときは、できるだけ専門家に相談しましょう。

身体にあった車椅子を使用するために、車椅子の購入時には、理学療法士や福祉用具の専門家、もしくは担当のケアマネージャーさん、市役所の福祉課などに相談することをお勧めします。

 

 

2019年12月27日 6:08 PM

『第93回理学療法通信』

糖尿病予防について(2)

今回は、2型糖尿病について少し詳しくご紹介していきたいと思います。

 

2型糖尿病の特徴

 2型糖尿病は、環境や遺伝的なものによって起こるとされています。また、食べ過ぎや運動不足によってもインスリンの働きが悪くなります。食べ過ぎや運動不足が原因でインスリンの血糖値を下げる働きが悪くなると、体はインスリンを欲しがるようになります。そのような状態の時に、食べ過ぎが続いていると、ブドウ糖が細胞に吸収されず、脂肪としてため込まれ肥満になります。そして、肥満になるとインスリンの効きが悪くなり、さらに悪循環を引き起こします。

 

2型糖尿病の悪循環を改善する方法

 食事療法と運動療法を組み合わせて、規則正しい生活を送りましょう。食事療法だけでは効果がないため、両方を意識して行うようにしましょう。

 

食事療法ってどうやるの?

 食事療法の目的は、食べ過ぎをなくすために、食事の量や食べ方に気を付けて、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)の負担を軽くすることにあります。一日の摂取カロリーを把握するために、自分の標準体重と身体活動量について知りましょう。

 

●まずは、自分の標準体重を知って、標準体重を目安に維持しましょう。

         標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22

   (例) 身長153cmの方の標準体重:51.4(kg)

             身長158cmの方の標準体重:54.9(kg)

             身長160cmの方の標準体重:56.3(kg)

             身長170cmの方の標準体重:63.5(kg)

 

あなたの一日の身体活動量はどのくらいでしょうか?

             安静臥床・・・寝たきりの老人など:20kcal

             軽い仕事・・・・デスクワークなど:30kcal

             普通の仕事・・・サラリーマンなど:35kcal

             体力を使う仕事・・・・力仕事など:40kcal

 

 

             ※体重1kgあたりの必要なエネルギー

 

●1日の摂取カロリーを把握し、エネルギーの摂りすぎに注意しましょう。

1日の食事の摂取カロリーは、体格(身長・体重)と身体活動量で決まりますので、上の数字を当てはめて計算します。

(例)・身長158cm・デスクワークの場合

     標準体重54(kg)×30(kcal)=1620kcal

   ・身長160cm・サラリーマンの場合

     標準体重56(kg)×35(kcal)=1960kcal

 

★ しっかり計算できればいいですが、面倒な方は、ある程度の標準体重を把握して、腹八分で辞め

  ておけば大丈夫です。重要なのは、続けることが大切です。

 

●その他、食事療法の注意点

・バランスの良い食事を心がける

   好きなものを好きなだけ食べるのではなく、バランスよく食べましょう

・朝食・昼食・夕食は決まった時間に食べましょう。

   食事の時間が不規則であったり、朝食を抜くなど1日3食摂らなかったりすると、栄養を脂肪とし

   て 蓄えようとする働きが強くなり 肥満になりやすくなります。

(その他)

 食事療法では、よく噛んで食べることや、寝る前に食事やお菓子を食べないことなど毎日の小さな

 積み重ねを継続することが大切になります。

 

運動療法はどうやる?

運動療法の目的は、日常的な運動を実施することで、血糖値を下げてインスリンの効きがよくなります。

 ●ウォーキングなどの有酸素運動

・ウォーキングなら9000歩、エアロバイクなら40分

・週3回以上行うことが望ましいとされており、時間のある方は、1日20~60分をめやすに行うといいそうです。でき

れば毎日行い、週に150分以上行うと運動効果が発揮されやすいとされています。

・「楽ちん」~「ややきつい」程度の負荷がより運動効果を発揮しますが、無理なく続けられる範囲  で実施することがい

いそうです。

 

 

●レジスタンス運動(筋肉に抵抗をかけながら反復して行います)

・例えば、スクワット・踵挙げ・腕立て伏せ・腹筋など、筋肉に負荷をかけて

 基礎代謝量をアップさせ、エネルギーを消費しやすい体をつくりましょう。

・毎日実施しないことが望ましく、週2~3回がいいとされています。

・1つの運動を8~10回実施し休憩しながらそれを3回行います。

他の3~4種類の筋力トレーニングと組み合わせて行うといいそうです。

【スクワット】10回×3回(合計30回)

【踵揚げ】  10回×3回(合計30回)

【腕立て伏せ】10回×3回(合計30回)

【腹筋】      10回×3回(合計30回)

 

※スクワットなどは、膝を曲げる角度を調整して負荷をつけると良いそうです。

    ただし、スクワットは運動方法を間違えると膝に痛みが出てしまう恐れがあるため、椅子からの立ち上がりなどに運動を

 変更するなど工夫が必要です。

 

日常生活の活動量を心掛けて多くする

・1日のなかで、5分でも10分でもいいから運動を実施し、それを数回行いましょう。

・運動時間が取れなかったり、忙しい方は時間を分けて運動しても、合計時間が週150分以上であれ

   ば、運動効果を発揮できるそうです。

<日常生活上の運動>

□ 家事をこなす        □ エレベーターではなく階段を利用する

□ 自動車に乗る時間を少なくして、徒歩や自転車に乗る機会を増やす

□ 立ち止まっているときに踵挙げを行う

 

■運動療法の注意点

・準備体操をしっかりおこなう

・膝の痛みを感じたら、その運動は中止

・体調の悪いときは無理をしない

・長く続けることが大切なので、強い負荷や疲れが出てしまうような運動は避ける

・動きやすい靴や服装で実施する

・一生懸命運動するのではなく、気軽な気持ちで行う

 

以上、2型糖尿病の食事療法と運動療法について、ご紹介しました。食事も運動も毎日、コツコツ意識して行うことで、肥満を防止し、糖尿病予防に努めましょう。

2019年11月6日 7:21 AM

『第92回理学療法通信』

糖尿病予防について(1)

糖尿病予防について話を進めるにあたって、今回は、糖尿病とはどういうものなのかを簡単にご紹介したいと思います。

■はじめに

通常、私達は食べ物を食べてそれをエネルギーに換えて体を元気に動かしています。少し、詳しく説明すると、炭水化物(ブドウ糖のかたまり)が体に入って消化されると、肝臓で分解し、血液中に流れ出て、筋肉や脂肪、その他の細胞に栄養素がエネルギーとして取り込まれます。ブドウ糖が細胞にエネルギーとして取り込まれるためには、「インスリン」というホルモンが重要な役割を果たしており、インスリンの働きが悪いと栄養素は、細胞に取り込むことができなくなります。

 

インスリンの仕事

インスリンは、胃の裏にある膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島という組織のβ細胞(ベータ細胞)から分泌されています。インスリンの主な仕事は、食べ物として取り込んだブドウ糖を肝臓・腎臓・筋肉・脂肪などの細胞に取り込めるように働きかけてくれるものです。しかし、このインスリンの分泌量が少なかったり、その働きが悪いと、ブドウ糖を細胞に取り込むことができず、血液中に「糖」が増えてしまいます。この状態を「高血糖」といいます。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンでもあるため、インスリンの働きが悪いと血液中に糖が沢山ある状態になってしまいます。

 

糖尿病ってなに?

糖尿病とは、このインスリンの分泌不足や働きが悪いことによって、血液中のブドウ糖が異常に増え、それが慢性的に続いている状態のことをいいます。

 

■血糖値が高い状態だと何が悪いの?

血糖値が高い状態が長く続いてしまうと、様々な合併症(動脈硬化・心筋梗塞・肝硬変など)が進みます。

また、糖尿病と診断され、血糖値が高い状態が長く続き、血糖値を下げたりすることができないと以下の重篤な障害をもたらします。

★糖尿病の3大合併症

・糖尿病性神経障害(痛みを伴う感覚異常)

・糖尿病性網膜症(視力低下や視野狭窄、最悪の場合失明)

・糖尿病性腎症(腎機能低下、悪化すると透析)

 

糖尿病の検査はどういったものがあるのでしょうか?

初回に血液検査を実施し、血糖値を測定します

空腹時に検査するものと、時間を指定しないで血糖値を測定するものがあります。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

HbA1cとは、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映するもので、日頃の血糖の状態を

みるための目安となるものです。

75g経口ブドウ糖負荷試験

空腹時の採血と同時に75gのブドウ糖を水に溶かしたものを飲み、30分、1時間、2時間後に採血し血糖値を図るものです。

★自覚症状の確認

口渇、多飲、多尿、ダイエットしてないのに体重減少

医師に糖尿病性網膜症と診断されたことがある場合

自覚症状は、目がかすむ、視力低下、飛蚊症(蚊が飛んでるように見える)、視野に墨がかかったように一部が黒くなる、視野狭窄などがあります。

 

これらの検査結果を組み合わせて、それぞれが糖尿病型の基準値となれば「糖尿病」と診断されます。

※ 今回は、糖尿病の基準値については、話が難しくなるので省かせて頂きます。

 

糖尿病の種類

1型糖尿病(すい臓のβ細胞の破壊によるインスリン分泌不足が主な原因)

・特に小児や若い人にみられる

・急激に症状が出て、糖尿病になることが多い

・すい臓のランゲルハンス島のβ細胞の破壊によるインスリン分泌不足が主な原因

・やせ型が多い

2型糖尿病(インスリン分泌不足と食べ過ぎなどの肥満により脂肪の蓄積などが原因)

・中高年に多い

・症状がでないこともあり、気が付かないうちに進行する

・肥満型も多いが・やせ型の方もいる

・生活習慣(食べ過ぎや運動不足)や遺伝的な影響によるインスリンの作用不足

妊娠糖尿病

妊娠中、胎盤のホルモンによりインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値が上がりやすくなります。多くの場合、高い血糖値は出産後に元に戻りますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来、糖尿病になりやすいと言われています。

 

以上、糖尿病について簡単にご紹介してきましたが、糖尿病の中でも、2型糖尿病については、食事や運動など生活習慣の見直しによって予防することができます。そのため、次回は、2型糖尿病について少し詳しく説明していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

2019年9月11日 3:58 PM

『第91回理学療法通信』

『誤嚥性肺炎について(4)』

今回は、誤嚥性肺炎を防止するために、当施設でも実施している体操について、ご紹介したいと思います。また、昼食前に実施することで、ご飯を美味しく食べられるよう運動しています。

●リハビリ体操

 当施設で実施しているリハビリ体操の目的は、肩まわりの動きをよくするための運動でもありますが、大きな声で数を数えることで、唾液(だえき)が沢山出るのを促しています。声を出して頂き、唾液が溜まった頃に、声をかけてゆっくり飲み込んでもらい、飲み込む練習も同時に実施しています。ここでは、口腔機能を高める運動の一部をご紹介します。

★両手を組み天井に向けて手を伸ばし脇の外側を伸ばします。(大きな声で10秒数えます)

■この運動は、10回数え終えたら、1回1回手を下ろして次の運動を実施しましょう。

■手が挙げられない方は、胸の高さで行なって頂き、麻痺のある方は片手で行なって頂いております。

       

 手を上に挙げて脇の      左に倒します        右に倒します

 下を伸ばします

★両肩を耳に付けるようにすくめ、上に挙げたらゆっくり肩を下ろします。                     (10回数えながら実施します)

 

■1回1回挙げて下ろすを繰り返します

                    

★両肘を曲げた状態で肩甲骨を回します。(前まわし10回・後ろまわし10回)

                   

●口腔体操

■口腔体操の前に唾液を一度、飲み込んで頂き、そのあとにお茶を飲んで口の中を湿らせます。

★唾液が沢山出る、ポイントがあり、そこを指の腹を使ってマッサージします。

初めは、唾液が出にくいですが、何回か繰り返すことで軽く押すだけで直ぐ出るようになります。

 

【耳の前の頬をぐるぐるマッサージします】

        

 

【親指で奥歯の内側から顎(あご)の下に向かって軽く押し上げながら移動させる】

                      

  矢印の方向に                親指の腹で、軽くあごを

   親指を移動させる        突き上げるように押します

 

★頬(ほほ)の筋肉を動かします。(ゆっくり回程度実施)

            

  頬を膨らませます                 頬を内側へ凹まします

 

★舌を出して動かします。(3~5秒程度保持)

                   

  舌を下に伸ばします              舌を左に動かします

                     

  舌を右に動かします         舌を上に動かします

 

★「パ」・「タ」・「カ」・「ラ」をそれぞれ5回連続して大きな声で発声します。

・ラッパの「パ」を大きな声で「パ」「パ」「パ」「パ」「パ」

・たぬきの「タ」を大きな声で「タ」「タ」「タ」「タ」「タ」

・カラスの「カ」を大きな声で「カ」「カ」「カ」「カ」「カ」

・ラッパの「ラ」を大きな声で「ラ」「ラ」「ラ」「ラ」「ラ」

 

食事の前にしっかり運動することで、食べる動作に必要な筋肉を積極的に動かし、唾液がたくさん出るように心掛けましょう。毎日行うことで、頬の筋肉も柔らかくなり、ご飯が美味しく食べられるようになるでしょう。

2019年6月26日 6:12 PM

『第90回理学療法通信』 

『誤嚥性肺炎について(3)』

 高齢であったり脳梗塞など様々な原因により、噛んだり飲んだりする機能が低下すると、食べ物を口から食道へスムーズに送り込むことが難しくなります。今回は、食べ物を目で確認してから、食べ物を飲み込み「ごっくん」するまでに起こりうる問題について対処方法も含め、いくつかご紹介したいと思います。

【食べ物を見て確認する時期】

①認知症であったり、食欲を自らコントロールできない方の場合、食べ物を食欲に任せて手掴みで口に運び、口の中いっ ぱいに詰め込んでしまうことが

  よくあります。食欲が旺盛でご自身で食べ方を調整できない方の場合、むせ

   込みや誤嚥に繋がってしまう恐れがあります。

★対処法

・はじめからご飯やお味噌汁、おかずをテーブルの上に並べず、小さい器で

 少量ずつ提供し、かきこみを防止します。

・スプーンの大きさを小さめのスプーンに変更し、一度に多くの食べ物を

 取り込まないよう工夫します。また、箸が使える方は箸を使って頂くなどの工夫も大切です。

・口に入れた食べ物をしっかり飲み込めたかを確認することも誤嚥防止につながります。食べ物を

 しっかり飲み込めていると思っていても、まだ口の中に溜め込んでしまっている場合もあるため、

 介助する場合は、時々、大きく口を開けてもらい、口の中に食べ物がないか確認することも重要

 です。

②食欲とは別に食べ物が食べ物であることを認識できていない場合や、食べ物を口に運べない場合も

 あります。この場合、食べ物を食べ物と認識できているかを確認することも重要です。

★対処法

・まずは、大好物や好みのものを探り、食べられるものから提供してみましょう。

・食べ物をテーブルの上に提供しただけでは食べない場合があります。その場合には、ただ「食べて

ください」「おいしいので食べましょう」ではなく、その食べ物についてのエピソードなどを盛り込んだ話をしたり、話を盛り上げることで、意欲的になり食事(食欲)につながる場合があります。また、少しだけ食べ物を口に運んであげることで、目の前にあるものが食べ物であると認識する場合もあります。一度、目の前の物が食べ物と理解できればご自身で食べ続ける場合もありますので、目の

 前にあるものが食べ物であるということを理解して頂くことはとても重要です。

・食べ物の見た目や温度を工夫することや、匂いを嗅ぐのも有効とされています。

【食べものを噛む時期】

・口の筋肉や頬・舌などが上手く動かせないと、食べ物をこぼしたり、口の中に溜め込んでしまうこ

とがあります。また、唾液を適度に出すことができないと、口の中で上手に食塊(食べ物の塊)が作れず、口の中で食べ物がバラバラになってしまいます。バラけた食べ物を上手にノドの奥に送ること

 ができないと、食べ物の一部がノドに詰まり、むせ込みや誤嚥につながる場合があります。

対処する前に・・・

・まずは、普段の会話を観察し、口の動き・頬の動き・舌の動かし方・唾液の出かたを観察してみま

しょう。会話したときに、口の開き方が小さい方は食事の時も上手に口を開けられない場合が多い

です。また、言葉が不明瞭で呂律が回っていないような話し方をする方は、舌が上手に使えていません。会話のときに表情が乏しく普段笑わない方は、頬の筋肉を使う機会が少ないので、頬が硬くなり

 唾液が出にくい場合がほとんどです。

対処法

・普段から、会話を沢山するように心がけましょう。話題が浮かばないときは、本や新聞などを大き

  な声を出して読むことをお勧めします。もし、口が上手に開けられないのであれば、頬を蒸しタオル

  などで温めたり、お風呂上りにマッサージしてから本を読むと良いでしょう。

【食べ物を飲み込む時期】 

・食べ物をノドの奥で「ごっくん」と飲み込むためには、舌の奥の部分を口の天井にある粘膜の上に

 ぴったりと貼り付けることができないと「ごっくん」できません。

対処法

・普段から唾液を飲む練習をしましょう。唾液を飲む段階でむせる場合は、食べ物を食べた時もむせ

ます。「ごっくん」するタイミングが上手に取れないと、むせ込みなどの危険性が高くなります。

 

次回は、誤嚥やむせ込みを予防するために、当施設で実施している運動についてご紹介したいと思います。

 

 

2019年5月4日 7:05 AM

『第89回理学療法通信』

『誤嚥性肺炎について(2)』

前回は、誤嚥性肺炎についてご紹介させていただきました。今回は、食べ物が口から食道へ入るまでの一連の流れ(動作)について簡単にご紹介させて頂きます。この一連の動作がきちんとできていないと、誤嚥性肺炎になる確率が高くなります。

 

【先行期あるいは認知期】   

・食べ物を見て食べ物と認識する

この時期は、目で食べ物を確認し、匂いを嗅いで、食べ物の形状などを認識する時期です。

・おいしそうな匂い。早くこの食べ物を食べたい

・食感が固そうだからしっかり噛もう

・お茶が熱そうだからゆっくり飲もう

・昔、食べた食べ物で苦手な食べ物だから食べるのをやめようかな等

 

【準備期・咀嚼期(そしゃくき)】

・食べものを噛む

食べ物を口に入れた後、歯、頬の筋肉、顎(あご)の筋肉、舌を使い、食べ物を細かく噛み砕きます。そして、食べ物と唾液を混ぜ合わせ、口の中で飲み込みやすいカタチ(形状)を作る時期 です。また、飲み込みやすくした食べ物の形状を食塊(しょっかい)と言います。

 

【口腔期(こうくうき)】 

・食べ物をノドの奥に移動させてゴックンまで

この時期は、噛み砕いた食べ物を舌でノドの奥へ送ります。ノドの奥に食べ物が送られると舌の奥の部分が口の粘膜の天井部分にぴったりと張り付き「ごっくん」され、食べ物が飲み込まれます。

 

【咽頭期(いんとうき)】

・食べ物を飲み込んだ後、食道へ食べ物が落ちるまで

この時期は、食べ物がノドの奥を通過し、食道へ流れていきます。食べ物がノドの奥を通過する際、口の奥の粘膜とノドの奥が接触し、鼻への通路を塞ぐことにより鼻への逆流を防ぎます。また、普段は呼吸をするために気管は開いていますが、食べ物がスムーズに食道を通過するためには、気管にフタをする必要があります。このフタの役目を果たすのが、喉頭蓋(こうとうがい)と言い、食べ物がスムーズに食道を通過する際に、とても重要な働きを担っています。

 

【食道期】

食べ物が、蠕動運動(ぜんどう運動)によって食道を流れていく時期です。

蠕動運動は意識的に行われない不随意運動で行われています。

 

 

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