2016年6月15日 4:13 PM

第70回理学療法通信 

『バランス能力~前編~』

 

転倒してケガをする高齢者は多いです。転倒の大きな原因の1つがバランス能力の低下であるといえます。ここで言うバランスとは、姿勢保持や動作時の安定性・不安定性を示すもので、筋肉・骨・感覚などの様々な要素が正常に機能することでバランスは保たれ、転倒しない身体を作り出すことができます。
バランス能力と足関節・股関節は深い関係にあります。人は足関節(足首)と股関節をうまく使ってバランスをとります。足首でバランスをとることを専門用語では「アンクルストラテジー(ankle strategy):足関節戦略」と呼びます。一方、股関節でバランスをとることを専門用語では「ヒップストラテジー(hip strategy):股関節戦略」と呼びます。若い健常者は、少しバランスが崩れた時には足首の動きでバランスをとって姿勢を維持し、大きくバランスが崩れた時には股関節の動きでバランスをとります。ところが、高齢者の多くは、少しバランスが崩れただけでも足首ではなく、股関節の動きを使ってバランスをとる傾向にあります。足首でのバランス、つまりアンクルストラテジーで運動を制御する際には、足首周りの筋肉をしっかりと働かせることで姿勢を安定させることができます。しかし、高齢者は若い人ほど筋力がないので、足首の周りに力を入れてなんとかバランスをとろうとしても、うまくアンクルストラテジーが機能しません。そのため、自然とヒップストラテジーで運動を制御しようとします。しかし、ヒップストラテジーではアンクルストラテジーに比べて素早い反応が難しく、重心位置の調整が遅れてしまいます。そのため、高齢者は若い人であれば転倒しないような、わずかなバランス崩れにも対応できず、転倒に繋がってしまうのです。
転倒を予防するためには、太ももやお尻などにある大きな筋肉を鍛えることも大切ですが、足首周囲の筋肉を素早く、力強く働かせることも必要です。次回は簡単なバランストレーニングを紹介したいと思います。

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