2021年7月2日 10:55 AM

『第102回理学療法通信』

<質問>

「五十肩と思われる痛みが続いているので、何か良い対策を教えて欲しい」

いわゆる五十肩とは、肩周囲の筋力低下や筋肉の硬さ、関節の隙間が狭くなるなど加齢とともに様々な要因が重なって起こります。

★ こんな症状ありませんか?

□ 上の物を取るときや、重たいものを持つと肩に痛みが出る

□ 車の運転でハンドルを回すときや、シートベルトを取る時に痛みが出る

□ 洋服を着るときに痛みが出る

□ 夜寝るときに痛みが出る

 

★ 肩に痛みがあった時の対処法

・有酸素運動

いわゆる五十肩の場合、肩だけに注目してしまいがちですが、先ずは全身の筋肉を温めるウォーキングなどから始めましょう。全身の筋肉が温まってくると、肩の周りの筋肉の硬さも取れて動きが良くなっていく場合もあります。

 

・肩が痛い時は、無理して動かさない

肩が痛いにも関わらず、痛い事を繰り返していると痛みが悪化してしまいます。よく、荒療法のようにたくさん動かせば治ると勘違いしてしまう年配の方もいらっしゃいますが、動かしすぎて肩が治ることはありません。痛みがある場合は、無理せず病院にいきましょう。

 

★ 日常生活動作を見直してみましょう

肩を使ったあとに痛みが強くなるようなら冷やしてみましょう(510分) 

家事や仕事後など、肩を使い過ぎて痛みが出るようであれば、アイスノンなどで肩を冷やしましょう。肩を酷使していない状態で肩を冷やすと、痛みが増強する場合があるため、その場合には、すぐにやめましょう。アイスノンなどを使用する場合は、必ずタオルを一枚巻いて冷やしましょう。

 

・夜に痛みがある場合、日中の活動を控える

日中は、無意識に活動量が増えています。肩を酷使する仕事や家事、スポーツ、重たいものを持

つことが多い場合、痛みが夜間に出ることがあります。その場合には、日中の活動性を調整し肩

にかかる負担を減らしましょう。

 

・夜に痛みがあり寝れない場合の対処法

肩が痛い場合、痛みがある方を下にして寝るのはやめましょう。また、仰向けで寝る場合には肩が重力で落下し、痛みが出ることがありますので、肩甲骨の下に3つ折りのタオルを敷いて寝てみましょう。

 

 

・最後に・・・

上記の方法を試してみても、痛みがある場合は、ソファーなど背もたれがリクライニングできるところで寝るといいかと思います。痛みが原因で夜間不眠になってしまう場合には、早めの受診をお勧めします。尚、詳しいことは、専門的な検査やレントゲンやMRIなどを撮ってみないとわからないことも多いため、痛みが長い間続いている場合や、日常生活に支障がある場合も早めに病院に受診することをお勧めします。

 

2021年4月30日 10:22 AM

『第101回理学療法通信』

質問

『母は、88歳で寝たきりの要介護5です。普段、床ずれができないように2時間ごとに左右の向きを変えていますが、左向きが嫌なようで気付くと右に向きを変えてしまいます。クッションを当てているのですが、押しのけてしまいます。何か良い方法はないでしょうか?』

 

理学療法士からのアドバイス

★お母様の生活状況から、右側の体の動きは比較的いいようです。右に身体を向けてしまう理由は、おそらく左向きが不快に感じるからと考えられます。

 

■お母様が左を向いた時に手や足の位置を確認してみましょう。

手や足が身体の下に敷き込んでいたりすると、時間経過と共に体が痛くなってしまいます。体位交換後に手や足の位置が体の下にないかを確認し、下側になる手足を少し前に出してみましょう。また、左の手足やお尻に傷などがあると、痛みを回避するために姿勢を変えている可能性があります。入浴時やオムツ交換時、着替えのときなどに身体の傷や赤くなっているところはないか確認してみましょう。

 

■体位交換後に、本人様の身体の位置がベットの端に行き過ぎてないか?

目の前に柵があると、誰しもが不快に感じると思います。柵と顔の適切な位置を保つためにお母様はご自身で体の位置を変えている可能性もあります。また、ベット柵に近過ぎる位置だと、転落もありうるので、体位交換後は、真ん中に身体がくるようにしましょう。

 

 

(その他)

■クッションの高さや種類、素材を変えてみるのも一つの方法です。

クッションの硬さや形状によっても変わりますが、クッションが高すぎたり低すぎることで、リラックスできていない可能性があります。お母様が不快にならないようにクッションの当て方やクッションの形状(柔らかさ・高さ・形)などを再度見直してみましょう。

 

■最後に・・・

お母様はご自身で体の向きを変えることができます。「床ずれ」とは、栄養状態が悪く、同一姿勢が長時間続き、骨の突出部などに圧が集中して血流が滞り生じます。上記のアドバイスを試してみて、それでも左にむいてしまうのであれば、右側と上向きの2パターンを交互に実施してみてもいいかと思います。要は、圧が集中しないようにこまめに体の向きを変えればいいのです。

 

 

 

 

2021年2月26日 10:33 AM

『第100回理学療法通信』

質問『麻痺があり、足首が硬くなっていると言われました。足首を柔らかくする方法は?』

 ★ はじめに

麻痺側の足が硬い場合、つま先が下を向いている場合が多いです。つま先が下を向いてしまうのは、ふくらはぎの筋肉の伸びが悪くなってしまっているので、ふくらはぎの筋肉を柔らかくしましょう。つま先が下を向いていると、まっすぐ立つことが難しかったり、歩行に影響するので、足首を柔らかくすることは、とても重要なことです。

 

★ ふくらはぎを温めて柔らかくする方法

入浴時にしっかり湯舟に浸かる足湯でもOK!

浴槽のお湯に浸ることで筋肉が柔らかくなります。また、バケツにお湯を入れた足湯だけでも効果的です。足湯の場合は、足首だけでなく可能であればふくらはぎが温まる深さのものがオススメです。

 

温めた足をストレッチしましょう。

ふくらはぎの筋肉が硬くなっていると、踵が床に着かない状態です。その場合は、踵を床に付けることでふくらはぎの筋肉が伸び、柔らかくなります。ご自身で、実施することが難しい場合は、ご家族様に膝をゆっくり押してもらうのもいいかと思います。その場合は、痛みや抵抗を確認しながら無理のないように実施しましょう。

※足を床に押し付けることが難しい場合は、身体を前屈させるだけでも足首がストレッチされます。

 

 ふくらはぎの伸ばし方

・筋肉に痛みが出ないようゆっくり伸ばしましょう。

・痛みが出る手前「気持ちいい」と感じるところで止めて、その状態で伸ばしましょう。

・筋肉がつっぱるところではなく、筋肉が伸びていると思うところで伸ばします。抵抗があるときは

 少し戻したところで伸ばしましょう。

 

 

 

2021年1月4日 12:39 PM

『第99回理学療法通信』

<質問> 麻痺がある人の靴の脱ぎ履きが大変な方の工夫は?

今回は、麻痺のある方の対応についての質問を頂きましたので、それについてお答えしたいと思います。

麻痺の程度には軽いものから重いものまであるので、すべての方に当てはまらない可能性がありますが、参考程度にご紹介したいと思います。尚、靴を履く動作が安全に行えるようになるまでは、介助者が一緒に行う事をお勧めします。

 

★ 適切な靴を選ぶ

・麻痺がある場合、足の動きを上手にコントロールできないため、できるだけ紐のない靴を選ぶことをお勧めします。また、足を靴の中に入れる場合には、より簡単に入れられる方がいいので、舌革(ベロ・タン)がない靴を選んだり、素材の柔らかいものを選ぶことも重要です。また、踵を靴に入れることが大変な方には、靴の踵側にリングがあるものを選びましょう

 

 

 

               

 

 

 

 

★ しっかりと椅子やベットに座れることをチェックしましょう

・麻痺がある方は、バランスを崩して転倒(転落)してしまうことも少なくありません。また、靴を履くときには、足を上げたり伸ばしたりと、体重移動も活発に行われるため、座った状態で手足や体を動かしても、バランスを崩さず座り続けることも重要な要素です。

(但し、介助者が靴の位置を工夫したり、倒れた時にサポートできる環境であれば問題ありません。)

                      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                     ★ 手や足の痛みや動きの制限はないかチェックしましょう。

・麻痺側の足を曲げた時に手や足に痛みがないこと、あるいは手や足に動きの制限がない事が前提となります。また、股関節や膝関節に痛みがある場合は、無理して実施するのはやめましょう。

※股関節を骨折している場合は、それなりの注意が必要なので、リハビリ関係者や看護師に直接確認をして注意事項も含め実施方法を教えてもらいましょう。

 

★ 靴を履く方法(左側が麻痺)

                                               

 ① 真っすぐ座る             ② 麻痺のない手で麻痺側の足(服)を持ち上げる

        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ③ 靴を小指側から履く                       ④ 踵はリングを引っ張り入れる

              

 

2020年11月4日 12:32 PM

『第98回理学療法通信』

質問者からの相談

母は、86歳の介護3で軽度の認知症があります。食事について質問ですが、普段はスプーンを使用できますが、上手に使えず手づかみで食べてしまいます。認知症が進んでしまったとは思いますが、何かいい方法はないでしょうか?

理学療法士からのアドバイス

普段は、スプーンが使えるということがポイントかと思います。通常は箸で食事が出来ていたり、手掴みでも食べ物を口に持っていく事ができています。つまり、お母様は食べ物を食べ物と理解されているので、少しずつ食事動作の手順を促していきましょう。

まずは食事環境を整えましょう。

食欲に任せて手掴みで食べてしまうと、のどに食べ物を詰まらせたり、むせ込んでしまったりするので、できるだけ介助者がゆっくり順を追って食事を提供することをお勧めします。また、86歳という年齢からも、嚥下機能(食べ物を噛むことや飲み込むこと)が低下してきているので、ゆっくり召し上がって頂けるようサポートしましょう。

・食べ物は沢山提供せずに、少しずつ提供してみましょう。

目の前に、食べ物が沢山あると好きな物から手当り次第に手掴みで食べてしまう可能性があるので、

食事を提供する場合には、目の前にお皿を沢山並べるのではなく1つの小皿に食べ物を移して、

それに集中して召し上がってもらいましょう。

■お母様がスプーンを使わないときは、一緒に手伝ってあげましょう。

はじめの数口は、介助者がスプーンに食べ物をのせて口まで持っていき、食べ物をスプーンで食べると言うことを意識付けします。そのとき、スプーンにのった食べ物を目でしっかり見てもらうことも忘れずに行いましょう。

 ■スプーンで食べるリズムが整ってきたら

・一度、お母様にスプーンを手渡し、食べ物を掬って食べられるか確認しましょう。

・お母様がスプーンを使用せずに食べ始めたら・・・

介助者のスプーンをお母様に渡して手を添えながら一緒に食べ物をすくいます。肘が曲がるところまでサポートすることで、自然とご自身で口にいれることができるようになります。始めのうちは、介助者が誘導してあげて、動作を繰り返していくうちに、お母様の手の動きが出てきたら、それに合わせて介助者の介助量を減らしましょう。

・お母様が食べ物をすくうことに慣れてきたら、反対の手でお皿を持ってもらいましょう。

お皿を持って頂くことで、さらに食べ物に集中できるようになります。

 

2020年8月27日 8:24 AM

『第97回理学療法通信』

今回は、高齢者でもできる筋力トレーニング(肩から腕の運動)をご紹介します。

  • 運動を始めるまえは、前回同様、準備体操をして始めましょう。
  • 運動の途中で痛みを感じたら中止にしてください。

肩の上の筋肉を鍛える(上げ下げ10回、ゆっくり行う)

 

腕を水平に挙げて、肩の外側の筋肉を鍛える(10回×3回交互に行う)

     

                                                                                                                                                                                                                                                          ★肘を曲げて、二の腕の筋肉を鍛える(10回×3回交互に行う

          

                                                                                                                                                                                                                                                                                               ★指と手の筋肉を鍛える(手を組み換えて10秒×3回)

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★両手で乾いたタオルを絞り、握力を鍛える(持ち手を変えて10秒×3回)

                                                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                         ■最後に、手を上に挙げながら深呼吸を3回行い終わりにしましょう

 

              

 

 

 

 

2020年7月2日 1:10 PM

『第96回理学療法通信』

今回は、「高齢者でもできる筋力トレーニング」についてご紹介します。これからご紹介する方法は、重い負荷をかけず、自分の手や足の重みを利用し実施する方法なので、無理なく実施することができます。今回は、足の運動をご紹介します。

 

■運動を始めるまえに・・・

・準備運動をしっかり行ってから運動しましょう。

・肩、腰、膝など身体に痛みがある方は、無理せず運動を中止しましょう。

・膝痛や腰痛がある場合は、個人に合わせた体操があるので、専門家(理学療法士やアスレチックトレーナー、健康運動指導士等)のアドバイスを受けることをお勧めします。

●足の運動

★股関節の前・太ももの筋肉を鍛える(片方10回程度)

      

 

★太ももの外側の筋肉を鍛える(10秒×3回程度)

     

★太ももの内側の筋肉を鍛える(10秒×3回)

      

 

★太ももの前を鍛える(5回~10回)    ★ふくらはぎの筋肉を鍛える(10回)

          

★スネの前の筋肉を鍛える(10回)

                  

■運動終了後は、深呼吸をして呼吸を整えて終わりにしましょう。

2020年5月8日 10:28 AM

『第95回理学療法通信』

★ 今回の質問

◆肩こりと首が痛いので、何か改善方法はありますか?

◆肩こりがひどいので、仕事の合間(隙間時間)にできる体操や、つぼ押しなどの方法が知りたい。

◆肩こりがひどく頭痛がするので、予防法や肩こりに効果的な簡単な体操を教えて欲しい。

 

■ まずはあなたの生活習慣をチェックしてみましょう

□仕事はパソコンなどを扱うデスクワークだ    □体が硬く、柔軟性がない

□肩こりは昔からある                 □運動不足であると自覚している

□肩が痛いので、肩を叩いたり揉んでいる        □目が疲れたり、頭痛や吐き気がする

□車の運転時間が長い              □腕が頭の上まで挙がらない

□猫背である                  □入浴はシャワー浴が多い

チェック項目にたくさん該当する方は以下の運動を実施してみましょう。

 

■日頃から全身運動を行い、体を温める

肩こりは肩の周りの筋肉(肩甲骨も含む)と頭や首についている筋肉の緊張や血行不良により生じるといわれています。また、重たい頭を支えるためには適度な筋の緊張と肩周りも含む全身の柔軟性を高めることが大切です。また、筋肉が温まっていないと、筋は血行不良を起こしやすく、柔軟性が低下することから、筋肉を温めることをまずは実施してみましょう。

 

★ 身体(筋肉)を温める方法

●シャワー浴でなく浴槽にしっかり浸かる。(10分程度)

●ウォーキングやエアロバイクなど有酸素運動を行う(20分以上)

●立った状態で足踏み、ランニング(5分程度×2~3回/日)

●ラジオ体操を実施してみる

 

★ 柔軟性を高める運動

今回は、休み時間や仕事の合間でも実施できるようその場で行う運動をご紹介させていただきます。運動効果をさらに向上させるためには、時間のある時に、お風呂上りやウォーキング後に実施するとより効果的です。

 

① その場で足踏み、もしくはランニング(5~10分)

② 肩甲骨を上に挙げて5秒程度そのままで保ち、ゆっくり肩を下ろす。(5~10回)

      

 

③ 肩甲骨を回します。(肘を回すようにすると肩甲骨もしっかり回すことができます)

④ 脇の下と背中の筋肉を伸ばします。(10秒×3回程度)

     

 

⑤ スネを伝って足首まで手を伸ばしゆっくり背中を伸ばします(10秒程度×3回)

⑥ 骨盤を動かす(各3回程度)

      

⑦ 背骨をねじります。(5秒×3set

       

 

⑧ 肩を入れて太ももの内側の筋肉を外側に伸ばします(10秒×3set

          

⑨ 太ももの前を伸ばす(10秒程度左右交互に)

 

⑩ 太ももを胸に近づけて筋肉をストレッチする(10秒程度左右交互に)

 

 

2020年2月27日 7:40 AM

『第94回理学療法通信』

今回からの理学療法通信では、皆さまの日ごろ感じている様々な疑問や質問に一つずつ答えていこうと思っています。

 理学療法士に聞いてみたいこと

★質問者より相談

父は80歳でやせ型、長身の体型です。車椅子に乗っている時、膝が上がった姿勢になり、座面が下がっているようになります。本人は自走すると、腹筋が疲れると言いますが、どのように修正すれば良いのでしょうか?

車椅子が調整できるタイプなら、高さを調整してみましょう。

お父様のように、膝が上に上がってしまう原因の一つは、

足置き(フットレスト)の高さが高いことが考えられます。

もし、購入した車椅子が高さ調整のできるタイプのもので

あれば、フットレストの高さを下げて調整しましょう。

 

■腹筋が疲れるのは、いくつか理由がある!

★充分な体の動きや筋力が確保されていないと体を曲げて代償する。

車椅子を駆動するためには、手の力が必要不可欠です。手の動きが悪いと、手を動かす代わりに体を曲げて腹筋を利用し車椅子を前方へ移動させようとしている可能性があります。

 

車椅子の座面の奥行が短いと体が前傾する

座面の奥行が短すぎると体が前傾し、駆動時に体を大きく前に倒すことになるため、腹筋が過剰に使われることになります。

 

小さい車椅子を使用すると、バランスをとるため体を前傾する。

車椅子のタイヤが小さいなど、お父様の身体に合っていない小さいサイズの車椅子を使用すると、体を前傾しバランスをとり、その結果腹筋が疲れるのではないでしょうか?

■車椅子を購入するときは、できるだけ専門家に相談しましょう。

身体にあった車椅子を使用するために、車椅子の購入時には、理学療法士や福祉用具の専門家、もしくは担当のケアマネージャーさん、市役所の福祉課などに相談することをお勧めします。

 

 

2019年12月27日 6:08 PM

『第93回理学療法通信』

糖尿病予防について(2)

今回は、2型糖尿病について少し詳しくご紹介していきたいと思います。

 

2型糖尿病の特徴

 2型糖尿病は、環境や遺伝的なものによって起こるとされています。また、食べ過ぎや運動不足によってもインスリンの働きが悪くなります。食べ過ぎや運動不足が原因でインスリンの血糖値を下げる働きが悪くなると、体はインスリンを欲しがるようになります。そのような状態の時に、食べ過ぎが続いていると、ブドウ糖が細胞に吸収されず、脂肪としてため込まれ肥満になります。そして、肥満になるとインスリンの効きが悪くなり、さらに悪循環を引き起こします。

 

2型糖尿病の悪循環を改善する方法

 食事療法と運動療法を組み合わせて、規則正しい生活を送りましょう。食事療法だけでは効果がないため、両方を意識して行うようにしましょう。

 

食事療法ってどうやるの?

 食事療法の目的は、食べ過ぎをなくすために、食事の量や食べ方に気を付けて、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)の負担を軽くすることにあります。一日の摂取カロリーを把握するために、自分の標準体重と身体活動量について知りましょう。

 

●まずは、自分の標準体重を知って、標準体重を目安に維持しましょう。

         標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22

   (例) 身長153cmの方の標準体重:51.4(kg)

             身長158cmの方の標準体重:54.9(kg)

             身長160cmの方の標準体重:56.3(kg)

             身長170cmの方の標準体重:63.5(kg)

 

あなたの一日の身体活動量はどのくらいでしょうか?

             安静臥床・・・寝たきりの老人など:20kcal

             軽い仕事・・・・デスクワークなど:30kcal

             普通の仕事・・・サラリーマンなど:35kcal

             体力を使う仕事・・・・力仕事など:40kcal

 

 

             ※体重1kgあたりの必要なエネルギー

 

●1日の摂取カロリーを把握し、エネルギーの摂りすぎに注意しましょう。

1日の食事の摂取カロリーは、体格(身長・体重)と身体活動量で決まりますので、上の数字を当てはめて計算します。

(例)・身長158cm・デスクワークの場合

     標準体重54(kg)×30(kcal)=1620kcal

   ・身長160cm・サラリーマンの場合

     標準体重56(kg)×35(kcal)=1960kcal

 

★ しっかり計算できればいいですが、面倒な方は、ある程度の標準体重を把握して、腹八分で辞め

  ておけば大丈夫です。重要なのは、続けることが大切です。

 

●その他、食事療法の注意点

・バランスの良い食事を心がける

   好きなものを好きなだけ食べるのではなく、バランスよく食べましょう

・朝食・昼食・夕食は決まった時間に食べましょう。

   食事の時間が不規則であったり、朝食を抜くなど1日3食摂らなかったりすると、栄養を脂肪とし

   て 蓄えようとする働きが強くなり 肥満になりやすくなります。

(その他)

 食事療法では、よく噛んで食べることや、寝る前に食事やお菓子を食べないことなど毎日の小さな

 積み重ねを継続することが大切になります。

 

運動療法はどうやる?

運動療法の目的は、日常的な運動を実施することで、血糖値を下げてインスリンの効きがよくなります。

 ●ウォーキングなどの有酸素運動

・ウォーキングなら9000歩、エアロバイクなら40分

・週3回以上行うことが望ましいとされており、時間のある方は、1日20~60分をめやすに行うといいそうです。でき

れば毎日行い、週に150分以上行うと運動効果が発揮されやすいとされています。

・「楽ちん」~「ややきつい」程度の負荷がより運動効果を発揮しますが、無理なく続けられる範囲  で実施することがい

いそうです。

 

 

●レジスタンス運動(筋肉に抵抗をかけながら反復して行います)

・例えば、スクワット・踵挙げ・腕立て伏せ・腹筋など、筋肉に負荷をかけて

 基礎代謝量をアップさせ、エネルギーを消費しやすい体をつくりましょう。

・毎日実施しないことが望ましく、週2~3回がいいとされています。

・1つの運動を8~10回実施し休憩しながらそれを3回行います。

他の3~4種類の筋力トレーニングと組み合わせて行うといいそうです。

【スクワット】10回×3回(合計30回)

【踵揚げ】  10回×3回(合計30回)

【腕立て伏せ】10回×3回(合計30回)

【腹筋】      10回×3回(合計30回)

 

※スクワットなどは、膝を曲げる角度を調整して負荷をつけると良いそうです。

    ただし、スクワットは運動方法を間違えると膝に痛みが出てしまう恐れがあるため、椅子からの立ち上がりなどに運動を

 変更するなど工夫が必要です。

 

日常生活の活動量を心掛けて多くする

・1日のなかで、5分でも10分でもいいから運動を実施し、それを数回行いましょう。

・運動時間が取れなかったり、忙しい方は時間を分けて運動しても、合計時間が週150分以上であれ

   ば、運動効果を発揮できるそうです。

<日常生活上の運動>

□ 家事をこなす        □ エレベーターではなく階段を利用する

□ 自動車に乗る時間を少なくして、徒歩や自転車に乗る機会を増やす

□ 立ち止まっているときに踵挙げを行う

 

■運動療法の注意点

・準備体操をしっかりおこなう

・膝の痛みを感じたら、その運動は中止

・体調の悪いときは無理をしない

・長く続けることが大切なので、強い負荷や疲れが出てしまうような運動は避ける

・動きやすい靴や服装で実施する

・一生懸命運動するのではなく、気軽な気持ちで行う

 

以上、2型糖尿病の食事療法と運動療法について、ご紹介しました。食事も運動も毎日、コツコツ意識して行うことで、肥満を防止し、糖尿病予防に努めましょう。

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